694人が本棚に入れています
本棚に追加
全ての始まりは
なんでなんでなんでなんでなんでなんでッ!?
なんでこんな事になった!? 俺が何したって言うんだよ!
いつも通り朝起きて、いつも通り学校行って、いつも通り授業受けて、いつも通り友達と馬鹿話して、いつも通り部活に出て、いつも通りの帰り道
――――――だった筈なのに!!
なんで俺はこの大雨の中で傘も差さずに全力で走っているのか。
「…………はぁ…………はぁ…………ッ」
ジクリと痛む腕を押さえる。熱い、痛い、怖い、そんな感覚がパレットでぐちゃぐちゃに塗りつぶした絵の具の様に体中を埋め尽くしている。
生まれて初めてナイフで切られた。刃物で切られるとその瞬間は意外と痛みが無い事を知った。そしてその後、じわじわと傷口が熱を持ちその次に痛みがやってくるという事も。
「クソ、痛ぇ。血も出てるし早く病院にもいかないと」
ばしゃばしゃと水溜まりを勢いよく踏みつけながら土砂降りの夜の町を全力で駆ける。恐怖と全力ダッシュでまともに呼吸も出来ず、酸素の不足した体は俺の意思に反してその場に座り込んでしまう。
恐る恐る背後を振り返ってみるもののそこには消えかかった街灯と電柱が整然と並んでいるだけだった。
いくら夜の大雨で視界が悪いとはいえ道路の真ん中で座り込むのは『奴』に見つけてくれと言っている様なものだと思い、一番近くの電柱の陰へと這う様に移動する。
「あいつがニュースでやってた雨降り切り裂き魔か……っ」
雨降り切り裂き魔はここ数年日本中を騒がしている連続殺人鬼だ。
最初のコメントを投稿しよう!