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ちらりと肩越しに背後を覗いてみると変わらずそこにはゴブリンの姿。
こちらが少しスピードを上げれば向こうも少しスピードを上げ、スピードを落とせば同じように減速する。まるで狙って付かず離れずの距離を保っている様に。
でもなんでそんな事をする? 走って人間に追いつけるならとっとと俺たちに追いついてその手に持った棍棒で襲い掛かればいい。そうしない理由は?
「あのっ! さっきから走りっぱなしで足がそろそろ限界なんっすけど!」
さっきゴブリンの説明を受けた時少女が言っていた言葉を思い出す。
奴らは狡賢いが力は弱い、素手の一対一で人間の大人と正面から戦っても勝ち目がないほどに。勝てない相手を追いかけ続ける理由、俺たちを走り続けさせて消耗させる為か若しくは、どこかに追い込む為……ッ!?
「気をつけろ!! 俺たち、誘導されてるかもしれない――――」
「えっ!?」
やや前を走る少女の足元、深く茂った草むらがばさばさと蠢く。
と、同時にその草むらから彼女の進行方向を妨げる形で一本の木の棒が飛び上がってきた。
全力走っている最中に突如として膝下程度の高さのハードルが足元に現れたような状態だ。それが引き起こす結果は火を見るより明らかなものだった。
「うぇっ!? ちょ、きゃぁああッ!!」
出現した障害物に足をとられ、そのままヘッドスライディングさながらに雑草生い茂る地面へとダイブした。そして地面に倒れ込んだ少女目がけて上から覆いかぶさるように左右の茂みから緑色の塊が飛び出してきた。
「なんすか! こ、こいつらどこから!?」
俺は俺で目の前ので起きた咄嗟の出来事に対して思わず足をとめてしまう。まずい、と思う間も無く背後から飛び掛かってきたゴブリンによって地面に押し倒されてしまった。
「クソ、離しやがれ――――ッ」
腕を振り背中にしがみついているであろうゴブリンを引き剥がすべくもがこうとしたところ、目の前で大きな火花が散った。
「――――っがぁ!!」
衝撃と視界の明滅。額から鼻先にかけて生温かく馴染み深い液体が流れきたのを確認し、ようやく頭を殴られたのだと理解する。
そして少し遅れて重く響く様な痛みが頭蓋の内側にじわじわと広がっていく。思い切り殴り付けやがって、動くなって事かよ。後頭部は危ないんだぞ、分かってんのかクソ野郎。
頭部を襲う痛みに耐えながら少し先で同じようにゴブリンに取りつかれている少女を見やる。
うつ伏せの俺とは逆に仰向けの状態で地面に転がされており、ゴブリンの数も腹の上に一匹、両腕に一匹づつ、両脚を束ねてその上に一匹と計4匹ものゴブリンが下卑た笑いを浮かべながら圧し掛かっていた。
「このっ、離せ!! 離しやがれっす! ……て、ちょっと! どこ触ってるんすか、この化け物!!」
おいおいおい人間を襲うとは聞いてたけど……やっぱりそういう意味でもあんのかよ。
ゲッゲッゲゥ、と品性の欠片もない鳴き声を出しながら腹の上の一匹が丁度少女の胸元に当たる部分の衣服を手に持った短剣で引き裂いていく。
「嫌ぁあああ――――む、ムグッ!?」
女の子にとって当然の反応としてかん高い悲鳴を上げようとするが、腹上の一匹が短剣を持っている逆の手で少女の口を押さえつけその勢いのまま彼女の頭を地面に叩きつけた。
無残に引き裂かれた衣類の隙間からは傷一つない白い肌、そしてその奥には柔らかな双丘がさらけ出されていた。
「んんーッ!! んむぅぅッ!?」
押さえつけられたその口からうめき声が漏れる。
衣類を切り裂かれ肌身を露わにされた羞恥の悲鳴とはまた違った悲鳴。それは嫌悪感から来るものだった。
腹上の個体が服を切り裂いたの見てか、両脚の上に乗っていた個体も同じように短剣で彼女の脚部を守る皮の防具を膝から太腿にかけて大きくスリットを入れる形で裂いていた。
そしてその隙間から覗く健康的な太腿から始まり、少女にとって最も触れられたくないないであろう部分に向けてべったりと悪臭を放つ涎まみれのざらついた舌で舐め上げていく。
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