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森を出てから数時間、歩き続けた俺たちの前に建造物の立ち並ぶ区画が現れた。
「おお、これが――――」
レンガ造りの壁で全体を囲まれた街並み。
西洋風の造りの建築物がずらりと並ぶ、いかにもファンタジー然とした空間。
「ついたっすよ! ここがカレストの町、始まりの町とも呼ばれる新人冒険者が多く集まる町でもあるんすよ」
大きな門の前まで近づくと、警備員の様な……いや門番って言った方がしっくりくるな。屈強そうなおっさん二人が駆け寄ってくる。
「おい君たち大丈夫か!? 随分酷い怪我をしてるな。何があった?」
「あー、ゴブリンとちょっと……」
「またか……。最近やけに多いんだよ、新人の冒険者がゴブリン共に襲われるトラブルが。いや新人だけじゃないな、それなりに経験を積んだ冒険者であっても一時の油断で危機に陥る可能性だってある。だが最近のゴブリンどもの行動は度を越えて異常だ、異常な程に知能が高い……。って今はそんな話している場合じゃなかったな、早く医者に見せないと。俺が案内しよう」
おっさんについていくと一つの建物の前に到着した。そこに立つ木の看板には赤い十字架のマークが記されていた。
「さあ着いたぞ。じゃあ俺は仕事に戻るとするから、お大事にな」
そそくさとその場を去ろうとする門番に若干の違和感を覚える。俺の視線に気が付いたのか門番はばつの悪そうな顔を浮かべる。
「いや、ここの先生が……ちょっと、おっかなくてな」
「……今からそこで診て貰おうって奴の前で変な事言わないでくれよ」
「はっはっはっ、すまんすまん。でも安心していいぞ、ここの先生腕は確かなんだ」
門番のおっさんが豪快に笑いながらその場を去っていく。
おいおい、不安煽る様な事だけ言っていきやがって……。
「あの……」
隣のカリンが不安げな視線を向けてくる。
「そうだな、ここで突っ立っていても仕方ねえし……怖いって言っても医者は医者だろ。お互いほっとけるような度合いの怪我じゃねえし、とりあえず入ってみるか」
恐る恐る木製の扉に手をかける。木材と蝶番が擦れる音が鳴り、ゆっくりと扉が開いていく。
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