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被害者は老若男女幅広く、場所も北は北海道から南は沖縄まで文字通り日本全国各地で犠牲者が出ている。
手口は単純で鋭い刃物で全身をめった刺し、シンプルかつ明確に人の命を奪う行為に一切躊躇が見られないその凄惨な現場を見た警察関係者からかつて19世紀後半にイギリスで名を馳せた連続殺人鬼ジャックザリッパーになぞらえた呼び名を付けられる程の残虐性。
そしてその呼び名のもう半分の由来、それは犯行が全て雨の日に行われているという点だ。
雨降り殺人鬼を追う警察の人間が言うには雨の日に犯行を行うというのはある意味理に叶っており、凶器が全て刃物という点からもわかる通りあんな殺し方をしたのでは返り血の量も尋常じゃないものになるだろうということ。
雨の日であれば視界も悪く狙いの獲物に忍び寄る足音さえも雨音がかき消してくれる、そういう意味ではレイニーザリッパーが雨の日に好んで犯行に及ぶのは非常に合理的でありその点から犯人は高い知能を持ち狡猾な性格をしていると言われている。
その一方で使い終わった凶器のナイフを現場に残していくこともあるなど詰めが甘く、きまぐれな行動が目立つとも言われている。
「冗談じゃねえ……。なんとかリッパーだかなんだか知らねえけどこんな所で殺されてたまるか……!」
少し休めたおかげで呼吸が落ち着いてきた。相変わらず足は震えたままだ、でもここにいつまでも隠れていられる訳でもない。
俺は自分の両脚を拳で殴りつけた。かなり強めに殴り過ぎたのかじんじんとした痛みが後をひく。でもおかげで、震えは止まったーーーーこれなら走れる。
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