初めての町

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「ええーなんでっすか? かっこいいじゃないっすか!」 「なんかこっ恥ずかしいんだよ。中二病全開のイタい奴みたいで」 「チュウニビョウ……?」 年頃の男子なら誰だって心当たりがあるであろう単語の説明をしている辺りで黒髪ポニーテールの女医、ドクター・ミナミが戻ってきた。 「内緒話は終わったかしら? それなら今日はもう休みなさい、怪我を治す一番の薬は休息よ。完全に治るまでしばらくの間うちで面倒見てあげるから」 それは有難い。さすがに今日一日で色んな事があり過ぎた。 学校帰りに趣味活しようと獲物を追いかけてたらドジ踏んで電車にひき殺されるわ、見知らぬ森で目を覚ましたと思ったらゴブリンなんて空想上の生き物に襲われて怪我するわ。 でも、なんだろうな。生前の前の世界に居た時よりも、なんかワクワクするような気がする。 初めてゴブリンを殺した時に感じたあの高揚感。やっぱ初めての体験っていうのは心躍るものだよな。 ……もっと色んな事を試してみたい。この世界には俺が今まで見たことも無いような生き物がたくさんいるに違いない。もしかしたら魔法を使う人間なんてのもいるかもしれない。 そいつらを相手に色んな事を試してみたい。 何が弱点でどこが急所でどんな手段が有効なのか、思いつく事を端から試してみたい。 クリスマス前夜にベッドへ潜る少年の様な希望を胸に抱きながら静かに夢の世界へと落ちていった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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