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「あのスライムのクエストから一週間、少しづつ魔物のレベルも上げながらサイスケさんに武器の扱い方を教えてもらいはしたっすけど! この猪さんはまだちょっと早かった気がするんすけどー!? 刃が通らないんじゃどうしようも無いっすよ!!」
猪に追われるまま彼のの元まで逃げてきたカリンと入れ替わる様に前へ出るサイスケ。
その手には刃に顔が映る程、手入れの行き届いた短剣が一本握られている。
「前にも言ったろ。獣だろうが人間だろうが生物の急所なんて大体同じなんだよ」
その背を追いかけていた少女に入れ替わり、短剣を携えた少年が突進する猪の眼前に立ちふさがる。
「ブヒヒィ!」
新たな獲物を前にさらに勢いを増した猪突猛進を半身分、体をひねるだけで躱すと同時に手にした短剣で獣毛に覆われたその喉元を撫でる様に斬り付けた。
「――――っ!?」
がりがりがり、と予想外の感触に目を見張るサイスケ。
脇を掠めていった猪から目を離すことなく視線だけ動かして手元の短剣を見やるとそこには変わり果てた愛用の武器の姿があった。
「あんだけカッコつけといてそれは流石にナイっすわ!!」
「お前から殺すぞ」
木の陰から顔だけ出して様子を窺うカリン目がけて使い物にならなくなった短剣を投げつける。
多少刃こぼれはしたものの大木に突き刺さる程度の機能は残っているらしく、少女の目と鼻の先程の距離にビンッ、と突き立った。
文句と抗議と悲鳴がごっちゃになった少女の叫びを完璧に無視しながら、こちらに向き直った角猪にどう対処するかの思考を巡らせる。
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