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あれよあれよという間に
ゴールへ疾走していたオレは水を差された怒りでカッと目を見開いた。
「なにすん……────ああッ!」
ぬめった熱い口内に根元まで一気に咥えこまれた。目にもとまらぬ早業だった。
間髪入れずに力強いストロークで幹を扱きあげられる。激しく。何度も何度も。
一心不乱に顔を上下する倉科は、伸ばした両腕でオレの上半身を押さえつけると、器用にも中指でクリクリと両乳首を高速で転がしてきた。
股間から聞こえるジュプッジュプッという水音と、強烈な快感、同僚にフェラされる羞恥と両乳首のくすぐったさに興奮度合いはマックスに達した。そしてそのまま一気に限界を越えた。
「はああああっっ!!」
ぐっと反った背中がベッドから浮き上がる。あごを宙に突き出した。
ビクン、ビクン、と何度も全身を痙攣させながら、倉科の口内に情熱のすべてをぶちまけた。
こんなに激しい絶頂ははじめてだった。
声を抑えきれないのも、こんなに長く射精するのも、だ。
痙攣がおさまりタネが尽きても、倉科はオレのムスコを咥えたままはなそうとしなかった。
賢者タイムに突入したから正直なところしばらく放っといてといてほしかったんだけど……好きにさせてやった。
だってゴックンしたし。こいつ。いまもお掃除フェラに余念がないし。
てかなんでこんなにオレのムスコに執着してるんだ?
しばらくして気がすんだのか、完全にフニャけた様子にあきらめがついたのか、倉科がやっと口内からムスコを解放してくれた。
ふぅ。ムスコよお前もお疲れ。……ん?
いや、まだだ。まだ終わってない。
オレの股間脇を枕にして至近距離からうっとりとした眼差しでながめている。
人差し指一本でつーっと輪郭をなぞったりつついたり。なんなのいったい。
ヤメロもうさわんなって。
「はーい、終了~」
ムスコに手を被せてガードすると倉科が顔をあげた。不満げな表情。…って知らんがな。あー、タバコが吸いてぇわ。
ゴロリと一回転して距離を置き、大きく伸びをした。ん~。
スッキリしたっ。
そのまま大の字になって気持ちよくまどろんでいると、そろそろとムスコに魔の手がのびてきた。
っとにしつけぇな。
目を閉じたままペシッとはたき落とす。倉科のうなり声。
「おい……」
「ダメもうオレ疲れた寝る」
「安斎」
「おやすみ」
「だめだ、まだ寝るな」
「…………」
「話があるんだ。安斎」
「…………」
「目を開けてくれ」
「…………」
「なあ、頼むから起きてくれ」
「…………」
「安斎……」
───────だあーーーッ!!
ガバリと上半身を起こした。殺気だった目でとなりに寝そべる同僚をにらみつける。
なんだよさっきからしつこいな! オレは眠いんだよ!
「勇者ごっこはどうだった?」
「ああ…!?」
───なんだって?
質問の意図がわからずオレは黙りこんだ。
てっきり自分一人が満足したことを責められるのかと身構えたんだけど……。
戸惑うオレに倉科が続けた。
「安斎最近、携帯ゲームのクリスタルファンタジーにはまってるだろ」
ん?
「うん。まあそうだけど…」
クリスタルファンタジーってのは、いまちまたで大人気の、異世界を舞台にしたRPG(ロールプレイングゲーム)だ。
無料でプレイできるんだけど、キャラクターや職業の種類が豊富でやりこめばやりこむほど奥行きが増していく神ゲームなのだ。
でもなんで知ってんの? オレこいつに話したっけ?
クリスタルファンタジーにハマってること。
「夢でいいからモンスターを倒しまくりたいって言ってただろ。だから、今日は楽しかったかと聞いてるんだ」
はあ…。さいですか。
オレはポリポリ頬を掻く。
え。聞きたいのってそれだけ?
オレだけフィ二ッシュしたことは不問に処してくれるのか?
薮蛇だからオレからは話をふらないけど。
「そうだな、まぁ楽しかったよ。……あ」
そうか、ここの世界観。クリスタルファンタジーが原型なんだ。モンスターたちも魔王の城も、見覚えがあるな~と思ってたんだよな。だからオレ迷わず魔王の間までたどり着けたんだ。
まぁ本家の魔王は巨大な野獣人間(オーク)だったんだけども。
「バトルは堪能できたか?」
「おー、堪能したした。剣で敵をつぎつぎと倒すのは爽快だった」
あ、でも。
「今回は勇者だったけどオレほんとは竜騎士がお気に入りなんだよな~。だから叶うなら竜騎士バージョンでのバトルもしたいかな!」
上機嫌のオレに倉科が頷いた。ふと何かに気づいたように窓の外へ視線を向ける。
「……そろそろ時間だ。行っていいぞ安斎」
「え? もう夜明け? 四時間経ったのか?」
「いや、まだだが…今日は早めに起きた方がいい。支度にいろいろ手間取るだろうしな」
「──?」
倉科が身を乗りだし、ベッドに座り込むオレの両目を片手で覆った。
「またな、安斎」
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