429人が本棚に入れています
本棚に追加
桔梗 四
そろそろ八つ刻になろうかという頃になっても、小鉄は現れなかった。
蔦は塵払いを手に、気遣わしげに戸口から首を伸ばして通りを窺う。
「どうしたんだろうね。いつもならとっくに顔を出してる頃なのに」
真白も算盤(そろばん)を弾いていた手を止めて、ふと戸口を見やった。
「そうだな。……今日は仕事も休みのはずだし、ちょいと様子を見てくるかな」
心配そうな蔦の様子が伝染したように、真白も何か落ち着かないものを感じ、算盤を片付けて腰を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!