桔梗 四

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桔梗 四

 そろそろ八つ刻になろうかという頃になっても、小鉄は現れなかった。  蔦は塵払いを手に、気遣わしげに戸口から首を伸ばして通りを窺う。 「どうしたんだろうね。いつもならとっくに顔を出してる頃なのに」  真白も算盤(そろばん)を弾いていた手を止めて、ふと戸口を見やった。 「そうだな。……今日は仕事も休みのはずだし、ちょいと様子を見てくるかな」  心配そうな蔦の様子が伝染したように、真白も何か落ち着かないものを感じ、算盤を片付けて腰を上げた。
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