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チャイムがなる。
起立。 礼。 着席。
騒がしくなる教室。放課後。
「ほら!はやくいこ!先生のとこ!」
うなづいて向かうのは、自習室。
先生は、うちの高校のチューターさん。
出会ったのは、高1の秋だった。
「ねぇ、美桜~。今日、くますごいよ?」
知ってる。階段を降りながら、言い訳を考える。こういうときだけ、私の頭は上手く回ってくれる。
「しょうがないでしょ!最後の…。週1しか会えないから、質問たくさん考えてたの!」
「あー。向こう理系だけど美桜、文系だもんね。」
「とくに数学苦手だから、壊滅的。」
「じゃあ、質問いっぱい作れたんじゃないの?」
「そうでもないよ。くだらない質問だったら恥ずかしいし、何度も何度も挑戦して、ほんとにわからなかったやつだけ!」
「そりゃ時間かかるわ。」
数分のおしゃべりで、自習室なんかすぐついちゃうほど、高校は狭い。
扉の先には、2か月ぶりの永久先生がいる。
「こんにちは。」
「おお。久しぶり。」
やっぱりこの声が好きだ。
いつも通り、紙に時間と名前をかく。
橘 美桜 15:41
「席、いつものとこでいい?」
「はい!ありがとうございます。覚えててくれて。」
「いつも来てくれるから。」
目があうと、にやっと笑ってくれた。バレるよ。先生。
「失礼しました。」
「やるじゃん。」
なんにも気づいてない、桃ちゃんはかわいいなぁ。
「そんなことないよ。」
「あ、でもみた?」
桃が、自習室の中を指差す。
「今日のもう一人のチューター、弓木さん。」
でた。
「あー。
私、あの人にすごく嫌われてるんだよなぁ。」
「永久先生のことが好きなんでしょ?たしか。」
中で、永久先生と弓木さんが話していた。
「そうなの?知らなかった。」
「ライバル登場?」
「さあ?」
「余裕じゃーん。」
だって、付き合ってるんだ。
永久先生と。
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