人ごみ

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人ごみ

突然だか私は人ごみが嫌いだ。べつに暑いからとかむさ苦しいとかそういう理由ではない。好きなものにも嫌いなものにも大体理由がある私には珍しく説明ができない。一番近い感覚で言うとしたら本能で、だろうか?大抵の事は好きだが、人ごみだけはどうしても無理だ。 だから花火大会何かは正直なんの娯楽にもならない。屋台が美味しいから行くと言う理論も勿論ない。と言うよりかは理解出来ない。よく考えればわかることだろ、いつもは百円で手に入るものをどうして三百円くらいものお金で払う?それだったらスーパーで食べ物を買ってテレビで花火を見たほうが有意義じゃないか?暑い思いもしなくて良いし、人ごみにも巻き込まれない。一人でゆっくり出来る。 そうして私は瞼を閉じた。 ふと、ここが夢であることが分かった。狭い部屋に大量の人が波のように押し寄せてみな一様に焦った顔をしている。 【そう、その顔が見たかったの】     そう、本能が言った。 【その為だったのよ偽物ちゃん】 そう、本能が私に囁いた。 【だから、もう貴女はいらないの】 そう、本能が、私を切り捨てた。 次の日私が目を開けると私の病気は完治していた。私の横には私の手を握りながら寝そべっている両親がいた。 「お母さん、お父さん?」 すると、両親が驚いた顔で飛び起きた。 「良かった…。お前が生きていてくれて。」 「?何のこと?」 「そう。覚えてないのね。でも、もう病気は治ったのよ」 そう言って両親は私を抱きしめた。 その時に丁度ついていたテレビでやっていたニュースで花火大会の事がやっていた。 「ねぇ、私。花火大会に行きたいな。」
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