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HAPPY×∞ BIRTHDAY PARTY🎂
数日前。
同じアパートの住人である臣くんは6月12日に二十歳に、牧田くんは7月28日に29歳になったのだと知った。
なので8月某日、遅れ馳せながら合同でバースデーパーティーを開かせて頂く事となった。
その際僕一人ではホスト役は心許なく思い、臣くんと年齢的にも近く、仲も良い蛇塚くんも誘わせて貰った。
四人の予定を照らし合わせた結果、金曜の夜がベストなんじゃないか、という事になった。
そして多少騒いでも大丈夫そうな場所、という点も考慮した結果、カラオケボックスが良いんじゃないかという話に落ち着いた。
「じゃあ僕は予定があるので、今日は定時で上がらせて貰いますね。」
パーティー当日。
白衣を脱ぎながら、僕は言った。
すると直属の上司である課長が、ゆるゆる、フワフワな笑顔で聞いてきた。
「珍しいね、久米くんが定時で帰るの。
何があるの?」
ほんの少し煩わしく思いながらも、会話をちょっとでも早く切り上げたくて、顔面に笑顔を貼り付けて答えた。
「同じアパートの人たちの、バースデーパーティーです。」
すると課長はにっこりと微笑み、言った。
「へぇ、そうなんだ。
僕の誕生日は、来月だよ。」
聞いてない、課長には。
...っていうか、どうでもいいし。
ほんの少しだったはずの煩わしさが、一気に頂点まで急上昇した。
だから僕は笑顔を返し、答えてやったのだ。
「あは、そうなんですね。
...永遠にお母さんの胎内に、居てくれたら良かったのに。」
課長の眉間に、シワが寄る。
そして彼の口から吐き出された、言葉ですらない低い音色。
「...はぁ?」
こぇぇぇえっ!!
...しまった、やり過ぎた。
身の危険を感じ、一歩後退した。
すると慌てた感じで金田さんが走ってきて、課長を背後から羽交い締めにし、捕獲してくれた。
「ちょ...、久米くん、時間ない癖に何喧嘩売ってんのっ!
ホント、勘弁してよ...、もう。
急いでるんだろ?
早く行け、俺の力じゃ長時間は押さえきれないからっ!」
「えっと...、お先に失礼しますっ!
金田さん、すみませんっ!」
課長の咆哮が耳に届いてはいたけれど、心の中で金田さんにそっと手を合わせて。
...僕は言うが早いか、研究室から勢いよく、脱兎のごとく駆け出した。
待ち合わせの時間は、18時ジャスト。
アパートから最寄りの駅前の、銀色をしたオブジェの前に集合予定だ。
課長の相手をしていた為、割とギリギリになってしまった。
少しだけ早足で、目的の場所に向かう。
でも足取りが早くなってしまうのはきっと、遅刻しそうなせいだけじゃない。
ワクワクする気持ちをおさえる事が出来ず、自然と口角が上がりそうになるのを感じ、無理矢理表情の筋肉を引き締めた。
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