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「俺もう、腕が限界。
...誰かタンバリン、交替してっ!」
あまりにも切羽詰まった感じの物言いに、心配したというのに...。
酔っ払っていた事もあり、腹を抱えて爆笑してしまった。
「いいっすよ、なら僕が後は引き継ぎます。
牧田さんは、こっちお願いします。」
なおも笑いながら、マラカスを差し出した。
牧田さんは相当酔っているのか、にへらと嬉しそうに笑ってそれを受けとると、今度は全力でマラカスを振り始めた。
そこでちょうど牧田さんが予約をいれていた曲の前奏が始まり、彼はマラカスを手に熱唱した。
牧田さんの声はかっこいいのだけれど、リズム感の方は僕同様、ちょっと残念な感じ。
...そのため僕は一方的に、親近感と仲間意識を強めた。
全力で歌いながらマラカスを鳴らす彼を見ながら、僕はあまり得意ではないアルコールをちびちびと飲み、交代したタンバリンを一生懸命叩き続けた。
しかし、記憶がちゃんとあったのは、ここまでで。
...気付くと僕はアパートの、自室の床に寝転がっていた。
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