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まさか国民的彼氏とも呼ばれるトップアイドルの検索履歴がこのような言葉で埋まっているなんて誰も思わないだろう。知られたら幻滅間違いなしだと思い至ってハルトは誰に見られるでもないのにスマートフォンの検索履歴を消した。
スポットライトがアイドルを照らすためには会場を極力暗くしなくてはいけない。だから出入り口には暗幕が付けられるし、非常灯も消される。開演前の暗闇がハルトは好きだった。だからかは分からないが、日差し降り注ぐ真っ昼間から渋谷の街にいることが恥ずかしくてしょうがなかった。
ここにいるのがプレシャスボーイズ、通称「プレボ」の山崎ハルトだとバレたら大混乱間違いなしだ。目深にキャップをかぶり、大きめのサングラスをした。黒いキャップから出る金髪が余計に目立ったりしないだろうか。現実世界でびくびくしながら過ごすことには馴れることがない。
「よっす」
待ち合わせの三十分前にハチ公前にいたら、十分前にシュンは来た。キャップもサングラスもしていなかった。
「ちょっ、その格好でいいの?」
「どうせバレやしないよ。こんなところに芸能人がいるなんて誰も思わない」
「そう、かなあ」
「ビビりすぎだよ」とシュンは笑う。なんだか癪だった。
「それにしてもハルトは早くに来たんだね」
「今、来たところだし」と検索結果にあったように返す。
「そう? そこのビルから見てたけど三十分は居たんじゃない?」
「えっ、見てたのかよ」
「嘘に決まってるだろ。全く、騙されやすいのな」
すっかり騙された恥ずかしさに耳まで熱くなった。
「さて、ハルトはどんなデートをしてくれるのかな」
始まってしまった男二人疑似デート。ハルトはすでに帰りたくなっていた。
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