ラブソングが歌えない

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「で、ハルトは初デートにカラオケを選ぶのか」  だってカラオケならハニーに見つからないし、というのもあるのだが、ハルトにとって特技は歌くらいしかなくて普通の遊びを知らずにいた。 「オレの生歌が聞けるんだからいいだろ」 「いつも聞いてるけどな」  いいからいいから、とシュンを座らせて自らの持ち歌や先輩グループの曲を入れた。  デュエットできる曲はシュンと一緒に歌い、時には振り付けを入れることもあった。 「これも歌ってよ」とシュンが入れたのは「あなたに愛の花束を」という市ノ谷シュン作詞のアルバム曲だった。  ハルトはこの曲が苦手だった。  花束をあげた事なんてない。愛を捧ぐこともない。ハルトが知らないことをシュンは知っている。悔しくて悲しい。恋を知らずに生きてきて、どうして愛の言葉を贈れるだろうか。 「なあ、シュンってどうして恋の歌ばかり書くんだ?」 「オレが恋してるから、だからかな」  頭をぶん殴られた気がした。  シュンが恋してる。なんだか嫌だな。ハニーに、とかそういうリップサービスでもない。ハニーが聞いたら卒倒ものだな、とハルトは自らの気持ちを誤魔化した。  ハルトがあまりにも寂しい顔をしていたからかもしれない。シュンは「次はオレの行きたいところ付き合ってよ」と言った。
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