ラブソングが歌えない

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 写真に撮られることに関してはプロだけれど、落書きには馴れていない。  適当に日付と名前とハートマークを書いたプリクラに「なんか変なの」という感想を抱いた。 「雑誌の写真とは違うだろ?」 「撮り直しが少なすぎる。別にいいけど」  でもなんか、普通なことに感動している。  瞳を大きく強調されていて元の顔がよく分からないけれど、隣に居るのがシュンだということが嬉しい。  二人でいることを肯定されている。仕事じゃない写真も悪くないなと思った。  カップルっぽい、ね。  自然と口元が緩んでいた。こんな楽しい思いをシュンと遊ぶ女の子はしているんだな。あれ、少し悲しくなった。 「何百面相してるの」 「なんでもない」 「すっかりオレの虜かな」  そういうことにしておいて、とハルトは否定しなかった。
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