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あの人と私
あの人と七夕を見に行ったことがあった
もちろん、二人並んで歩きたかったけど
押されるくらいの人ごみの中でさえも一緒には歩けない
会社が近かったから
俺はすこし後ろを歩くからサチは先を歩きなさい
べつに七夕飾りが見たいわけではなかった
どんな平凡な風景だって、どんなつまらないものを見たってあの人とだからしあわせだった
この人ごみを鳥が俯瞰したらただの小さな黒い点に過ぎないあの人と私だけど
でもあの人とは真心で繋がっていたと思う
後ろから私を見ていてくれるけど寂しかった、やっぱり
飾りを見ていても何だか上の空だった
車に戻って隣に座って話している方がしあわせな気持ちになったのを覚えている
別れのときは必ずくる
私が他の男子と出掛けたとき、なんで行ったんだよ?!とあの人は怒った
わたしがあなたとは、結婚できないでしょって言ってしまったときのあの人の寂しそうな顔は、今でも忘れない
あの人は私と普通のカップルのような気持ちでいたんだとその時、知った
私は謝ることができなかった
その場は険悪な雰囲気になって、俺は今日は帰るよと言って車から降りた私を置いてスピードをあげて帰ってしまった
やっぱり、言ってはいけないことだったと思ったけど後の祭り
でも次に会った時は、別になんにも変わらず話してくれた
結局、私は心の底にごめんねはあったけど謝れなかった
いよいよ別れのときが来た時、あの人は私に言った
前にサチが他の奴と出掛けたとき、俺、怒って帰っちゃっただろ
あの時間が今はたまらなくもったいないことをしたと後悔してるんだ
いつか、こういう時がくることはわかっていたのにどうして一緒にいたあの時間を大切にしなかったんだって。サチから言われた言葉が悲しくて、でも本当のことだったし、一緒にいれば良かった
大事なかけがえのない時間だったのに、ごめん
泣いていたあの人
私より年上のあの人
私が愛していたあの人
あの人にもしあわせな家庭はあった
決していいことではない
でも、生きていれば真っ直ぐに歩けないときもある
あの人の家族に申し訳ないという気持ちを忘れたことは一度もなかった
私とあの人は誰も傷つけないうちにそれぞれの道に戻った
大切に、それはそれは大切にお互いを想いながら・・
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