一年半

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頬とおでこがひんやりとして心地よい。 ああ、懐かしいかかぁの手の感触。 働き者の優しく小さな手だ。 眼を開くと、かかぁの顔が目の前にあった。 ベッドに一緒に添い寝してくれていたのだ。 彼女はにっこり笑うと、俺の背を優しく叩きながら 娘が小さい頃よく歌っていた子守歌を、ひそやかな声で歌ってくれた。 俺はもう一度目を閉じる。 ずうっと聞いていたい優しい声だ。 俺は歌声を聞きながら思ったんだ。 前世の記憶は薄れるんじゃなくて、自分で手放すんじゃないだろうか。 俺はこの時新しい人生を、もう一度彼女と築いてゆきたいと思ったんだ。 彼女はきっと俺を曾孫として心から愛してくれる。 そして俺も間違いなく、彼女を大切にするだろう。 それは今の家族を俺が信じて受け入れることで、 また俺自身を信じることなんだ。 前世の記憶を手放しても、俺は変わらない。 彼女も家族たちも変わらない。 今なら俺は心からそう信じる。
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