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頬とおでこがひんやりとして心地よい。
ああ、懐かしいかかぁの手の感触。
働き者の優しく小さな手だ。
眼を開くと、かかぁの顔が目の前にあった。
ベッドに一緒に添い寝してくれていたのだ。
彼女はにっこり笑うと、俺の背を優しく叩きながら
娘が小さい頃よく歌っていた子守歌を、ひそやかな声で歌ってくれた。
俺はもう一度目を閉じる。
ずうっと聞いていたい優しい声だ。
俺は歌声を聞きながら思ったんだ。
前世の記憶は薄れるんじゃなくて、自分で手放すんじゃないだろうか。
俺はこの時新しい人生を、もう一度彼女と築いてゆきたいと思ったんだ。
彼女はきっと俺を曾孫として心から愛してくれる。
そして俺も間違いなく、彼女を大切にするだろう。
それは今の家族を俺が信じて受け入れることで、
また俺自身を信じることなんだ。
前世の記憶を手放しても、俺は変わらない。
彼女も家族たちも変わらない。
今なら俺は心からそう信じる。
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