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第13話 拘束
「え…ちょ…甲斐谷…何言って…」
「あれから所長に言われたんや。誠との身体の相性は良かったか?て。所長とは3日に1回やから、合間に貸したってもいいって。今日が3日目やろ、またアイツのとこ行くんか⁈」
甲斐谷は靴を脱いで部屋に上がって来ると僕に詰め寄って来た。
あのクソ狸、余計なことをベラベラと…
勢いに押されて壁際に追い詰められる。所長に対しては怒りしか沸かないが、壁と甲斐谷に挟まれ張り付けられると、否が応でも心臓が高鳴ってしまう。
「オレ、誠のことが好きや。オレは男を好きになった事無いから、この気持ちが何なのか分からんかった。でも所長に抱かれてるお前を見たら…」
まさかの告白。気持ちはこの前のキスで気付いたが、言葉にするとは思わなかった。胸が熱くなり、甲斐谷の首に腕を回しなくなる衝動を何とか抑え込む。
しかし甲斐谷は、僕を壁に追いやり、硬くなった股間を押し付けて来た。ダメだ、それ以上僕に近寄るな…もう、放っておいてくれ。
「所長に付き合う必要なんか無いやろ」
「甲斐谷には関係無い! 僕は他に行くところなんて無いし、ここに居たい。一人前の訓練士になりたい。その為に所長を利用して何が悪い!」
心臓が痛い。お願いだ甲斐谷、これ以上僕を追い詰めるな。
押し退けようともがいてもビクともしない。文字通り僕は壁に張り付けにされていた。
「どけよ…所長が待ってる」
「行かせたくない。行かせへん!」
口に舌をねじ込まれ、ズボンのファスナーを降ろされると、ズボンはその重みで足元まで落ちてしまった。ブリーフの上から股間を揉みしだかれると、膝の力が抜けていく。
「んん…っ…!」
横を向いて何とかキスからは逃れたものの、甲斐谷の膝に座っているような状況で、首筋に舌を這わされ思わず身体が疼いた。
好きな相手から告白されて、何故応えられない……
好きな相手に抱かれて、何故愛しあえない……
そんな疑問や衝動を全て凍らせ、甲斐谷が一番傷付くであろう言葉を探して呟く。
「所長……たすけて……」
途端に身体が自由になった。愕然となった甲斐谷が力を抜いたからだ。
すぐに距離を取ろうとしたが、ズボンが足枷になって転んでしまった。四つ這いで離れるも、後ろから抱き抱えられてしまった。
「甲斐谷、離せ、行かせろ」
「お前もオレを好きやと思ってたのに、残念や」
「何故分からない! もし仮に僕が甲斐谷のことを好きだったとして、あの所長が僕を手放すとは思えない。甲斐谷が邪魔になれば、何をされるか分からない。僕が所長に気に入られてさえいれば、全て丸く収まるんだ。甲斐谷が…お前が…話をややこしくしてるんだよ…」
抱き抱えられたまま喚き散らした。甲斐谷は四つ這いの僕に覆い被さり、腰を抱いて引き寄せると、首筋に唇を当てて尋ねた。
「二度と聞かへんから1回だけ答えてくれ。オレに対してホンマに恋愛感情は無いんか?」
そんな事、聞いてどうするんだよ…
シンと静まる4畳半に、震えている自分の呼吸の音が響く。ゴクリと、甲斐谷の喉が鳴った。
シャツの中に大きな手が入って来て、心臓を支えるように抱き寄せられる。そんなところに手を置かれたら、口で嘘をついてもバレてしまう。
「オレを嫌いか? 所長に促されるまま、嫌がるお前を抱いたオレを嫌いか? 嫌いやったらハッキリ嫌いやて言うてくれ」
意地悪な質問をするな。嫌がるフリをしていただけだ。本当は歓喜に震えていた。今も、包み込まれるように抱かれているだけで、心臓はグランドを全力で10周した後みたいだ。
気付くな…僕の気持ちがどうでも結果は変わらない。
長い沈黙の後、甲斐谷は僕を降ろし、上からのしかかってきた。今度は床に張り付けにされたまま、ブリーフを脱がされ、足を開かされる。腹下に手を入れて、もう既に覚醒している僕の分身を握り込んできた。
熱くて長い指に包まれしごかれると、すぐにカウパーで滑り始める。
「あ…やめ……んっ……」
3日ぶりの刺激が甲斐谷の手だなんて、数日前まではただの妄想だったのに。甲斐谷も自分のモノをこうやって触るのか、慣れた手つきで、絶妙な緩急と圧迫感でしごかれる。
シャワー前の汗臭い僕の髪に鼻を埋め、甲斐谷は僕の名前を呼び続けた。
「誠…誠……誠…」
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