第4話 担当犬✔︎

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第4話 担当犬✔︎

 昼休み。母屋で昼食を食べた後、自室に戻って少し休憩を取る。いつもは訓練で指摘された事をメモったりしているが、今日は朝から身体が疼く。  ダルさの抜けない身体を休めようとブルージャケットを脱ぐと、まだ微かに両手首にリードの跡が残っていた。それを見た瞬間、所長の存在感を思い出し、アナルが熱を帯びるのを感じた。 「はー……」  自分の身体の暴走に深いため息をつく。休もうと思ってたのに…こんな状態で仕事に戻って、甲斐谷に触れられでもしたら勃ってしまいそうだ。  抜いておくか…。  ドアに鍵をかけトイレで腸内洗浄すると、ローションとティッシュとエネマグラを用意し、ズボンとブリーフを膝まで下ろす。  手にローションを出して、四つ這いになりペニスとアナルに塗りつけ、アナルを少しほぐしてからゆっくりとエネマグラを刺し込んだ。  家庭教師がくれた黒い医療器具は、最近の自慰行為には欠かせない道具になっている。尻の筋肉が導き前立腺を直接刺激し始めるので、一緒に前を擦ると、すぐにペニスは勃ち上がった。    ここに甲斐谷のアレが入ったら、どんな感じなのだろうか。甲斐谷の汗の匂いを思い出し、熱くて、弾力のある塊を刺し込まれる様を想像した。 「…か…いたにっ……」  その名を呟いてみるが、何故かハッキリと蘇るのは所長の体温と体重ばかりだ。実体験の忘れてしまいたい記憶を振り払い、甲斐谷の低い落ち着いた声で名前を呼ばれる妄想に集中する。 (誠…) 「はぁ…は…も……イク……!」  ペニスを擦りながら、甲斐谷の長い指や、広い肩幅を想像し、彼への罪悪感と共に止められない欲望を吐き出した。  痺れるような放出感の後、それらをティッシュで拭い、エネマグラを抜こうとした時、ドアをノックする音が聞こえドキリとした。 「誠、居るか? ちょっと聞きたい事があるんやけど、いいか?」  甲斐谷だ。狭い訓練所内で居留守を使うわけにもいかないので、ティッシュを布団の中に隠し、エネマグラを抜く暇も無くズボンを履き服を整えてドアを開けた。 「悪い…ちょっとダルくて…寝てた」  部屋に入られないよう入口を塞ぐように立つと、甲斐谷は不思議そうに屈んで顔を覗き込んだ。 「どうした、体調悪いんか? 顔が少し赤いな…」  甲斐谷の手が額に触れ、強張った拍子にエネマグラが前立腺を圧迫し始めた。イッたばかりの身体に再び刺激が貫き走る。 「ぁ……だ…大丈夫…だから」  思わず声が上ずってしまった。不信に思ったのか、甲斐谷がさらに一歩踏み込んで来た。これ以上近付かれると、部屋の匂いに気付かれるかもしれない。 8c839813-6c22-4680-bdc2-2620676010fc  そんな僕の心配をよそに、甲斐谷は額から頰を撫で、熱い親指で唇をなぞった。その指が口の中に入って来ることを期待してしまう。浅い呼吸を1つすると、また直腸の中で硬い物がうねった。膝の力が抜けそうになるのを耐え、甲斐谷の胸に手を置くと、一歩後ろへ押しやった。 「も…休憩上がるから、先に犬舎で待っててくれ。僕が虎鉄を出すよ」 「…わかった…聞きたかったのはソレや。あと、体調悪かったらちゃんと言えよ?」 「ん…」  犬舎に向かう甲斐谷の背中を見送ってホッと安心すると、また前立腺が刺激された。ヤバい、早く抜かないと午後の業務に支障が出そうだ。  すぐにトイレに駆け込み後始末をすると、若さゆえかまだ治りきらない火照りを抱えたまま、休憩を終えて犬舎へ向かった。  犬舎前では既に林さんと甲斐谷が、犬用のオヤツやオモチャを出したり、バケツに水を汲んだりと午後の準備を始めていた。 「誠君、虎鉄出して来てくれる?」 「はい」  5歳になる柴犬の虎鉄。噛み犬として預けられ、他のスタッフは全員威嚇されたが、何故か僕にだけは噛もうとしなかった。背格好が僕に似た若い男性に可愛がられていたのかもしれない。  噛み犬はまず噛ませない事が一番大事で、犬舎からの出し入れ時は特に威嚇が激しいので、ほとんど僕がやる事になっていた。  犬舎の中で首輪にリードを付けて虎鉄を連れ出す。こうしていると普通の犬のようだ。しかし、犬舎から出て林さんにリードを渡した瞬間に虎鉄の雰囲気が変わった。人間の方は全く見ないが、明らかに毛を逆立てて緊張している。  訓練より慣れる事が優先なので、無理に従わせたりはせず、虎鉄にただ付いて行く感じだ。僕と甲斐谷にとっては初めて担当犬。担当と言ってもまだやる事は犬舎への出し入れだけだし、基本的には林さんが全部やってしまうわけだけど…初めての担当犬にワクワクしていた。 「誠君、ちょっと来なさい」  突然、一番会いたくない人物からの呼び声に背筋が凍った。母屋の横にある事務所の方から、所長が僕を呼び付け、春の陽気も、初めての担当犬へのワクワクも全て打ち消した。  また一昨日のような事をされるのだろうか…  僕は目で甲斐谷に必死で助けを求めたが、全く通じなかった。 「所長が呼んでるで。お前、さっきちょっと顔色悪かったから、所長の長話でも聞いて休んで来いよ」 「甲斐谷……行きたくない」 「大丈夫やって。ここは俺に任せて、ちょっと所長と一服して来い」  所長の性処理の相手をさせられるなんて言える筈も無く、僕は震える足で所長の腕の中へ向かった。
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