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 平日だというのに――  市民プールに近付くにつれて、続く道が渋滞してきた。夏の手っ取り早いレジャーといえば、プールだ。考えることは同じとみえて、母親らが自転車や車に子供を乗せて同じ方向に向かっている。  父親もチラホラいるが、割合としてはかなり低い。日曜日が仕事の場合は、平日が家族サービスになるのだろう。  はる(・・)は、母子ばかりのプールでどんなことを感じるのだろうか――不意に連れてきたことを後悔しそうになりかけたが、俺は、即座にそれが愚かな考えであることに思い至った。現実をありのまま受容し、そこで万が一生じた問題からは決して逃げずに一緒に解決しようと、そう決めたのだから。 「それにしても、駐車場も駐輪場も混雑してるなあ――はる、少し待つかもしれないけど、その先がプールだから少し我慢してくれな?」  この調子じゃ、入ったはいいが出るのも一苦労だろう。そんな覚悟をしながらノロノロと車を走らせる。ここにいる誰もが条件は一緒だ。  渋滞や混雑に嫌な感情を持つのではなく、プールで何をして遊ぼうか? はるの写真をたくさん撮って、健さんに送ってあげよう! その写真を見た健さんの嬉しそうな顔を想像してニヤついてしまう。  あれこれ楽しいことを考えながら走っているうちに、駐車場の入り口まであと数メートルのところまで迫っていた。
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