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 健さんと俺は、男同士ではるを育てている。  厳密に言えば、はる(・・)は健さんの子供で、俺は彼のパートナーだ。(現時点では何ら法的根拠がないから、勝手にそう宣言しているだけだけど……)  俺たちの住む自治体に『パートナーシップ制度』は導入されていない。しかし、万が一導入されていたとしてもその制度は利用せず、俺を養子として自分の籍に入れたいと健さんは考えているようだ。正直、俺としてはどちらでも良いのだけど、健さんは将来的にはる(・・)と俺が(実情は親子だが)兄妹としてでも、法的に繋がっていて欲しいと願っているらしい。  仮にパートナーシップ制度を利用した場合、健さんに何かがあったらはるの親権はパートナーである俺には引き継がれないという。俺もそんなのは嫌だから、ゆくゆくは健さんの意向に沿いたいと考えている。  ――俺もはるの父親だからな!  はるが大きくなったら、俺は胸を張ってそう言ってやるつもりだ。なんてったって、俺は健さんの亡くなった奥さん(はるの母親)の墓前で『健さんと、はるのことは任せて欲しい』と、胸を張って宣言したのだから。  健さんは大学病院のICU室長で優秀な外科医で、俺は数年前までそこで看護師として働いていた。紆余曲折の末、健さんと俺は恋人同士になり、俺ははる(・・)の子育てを優先する為に外来に異動した。  そして昨年、臨床現場から止む無く離れた俺の将来を憂慮した健さんが、はるの子育て期間を利用して、院で更なる知識や上位資格を取得してはどうかと勧めてくれた。健さんの後ろめたさも十分理解できたから、俺も必死に勉強した。  そういうわけで、現在俺は子育てをしながら院に通っている。  学生だと家事をする時間もしっかり確保できるので、働いていたころに比べると精神的にも肉体的にも余裕が持てるようになった。
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