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ツースロー
生温かい風をおでこいっぱいに受け止め、目一杯の速さで自転車をこぐ。例の公園にたどり着くだけで二~三十分かかってしまうので、中学三年を控えた春休みの午後、つかさは一分でもバスケの練習時間を増やすために急いでいた。
事故に遭わない程度のスピードを維持してやっと公園にたどり着く。広い公園で、スケートリンクやちょっとした競技場が併設されており、そのはしっこにそびえ立つバスケ用のゴールリンクを目指す。
よく顔を合わせるフィギュアスケートの子や、アイスホッケーの子らとは挨拶するくらいまでには通いつめていた。フィギュアの女の子でちょうど同じくらいの年齢の子がいて、勝手に親近感を持っている。
この辺りで、外でバスケットボールの練習ができるといえばここくらい。あとは屋内だったが、体育館は学校やサークルなどの団体、個人の場合もあるし、とにかく空きが少なく料金も割高。
しかしこの隅っこにあるゴールリンクは一つしかない上に、ハーフコートであることもあり、あまり認知されていなかった。ゴールネットもだらしなく破れ、たらんとぶら下がっており、あってないようなものなので人気がない穴場となっている。 「おっし!」 気合いを入れるとすぐにシュート練習を始めた。
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