第三章

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「うるさいなぁ。弓道部は静かな競技でけど、体育会系だよ。 みんな結構好き勝手言ってるの」 そうだ。私は悪くない。 私は私の気持ちにそって意見してるだけだ。 なのに、少数派だからと言って悪者呼ばわりされるのには納得できない。 「子供だから、大抵のことは明日になれば忘れちゃうけど、 あんたは言い方がえらそうなのよ。 もうちょっと、人の気持ちを考えなさい」 甘い言い方をすれば、みんな努力するようになるとは思えない。 そもそも努力をちゃんとしていないのに、自分の気持ちを優先してほしいだなんて、虫が良すぎる。 「私はただ、みんなに勝ってほしいだけなの」 「みんなが勝ちたいとは限らないでしょ」 「だったら、よそでやってよ。私は真剣にやってるの。 今は春だけど、秋の大会なんてあっという間に来ちゃうのよ。 なのに、もめてるのは、あの言い方が嫌だ。練習が嫌だ。 もっと、効率よくやたい。インスタ映えするのがいいって。 ふざけないでほしいの!」 「あんたの言いたいこともわかるけど」 「わかってない!」 ーーーわかってたら、何で私の否定から入るのよ。 母のいつもの癖だとわかっているのに、結子はいつも真正面からぶつかってしまう。 結子はぶすりと下唇を出して拗ねる。 「はぁー。もうやめてよね、その顔。ほんとみっともない」 今日の疲れもあっただろう。日頃のせいもあっただろう。 今日でなければ聞き流せていただろう。 だけど、今日は無理だった。 ついに、抑えていたものが爆発する寸前だった。結子は机を叩こうと拳を振り上げる。 突然、けたたましい音と悲鳴がが風呂場から聞こえた。 「わぁぁぁぁぁぁぁ!」 居間にいた全員が驚いて、廊下を見る。
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