第一章

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ただ、妙に感じたのはそこではない。 彼が子供だと言うことだ。 確かに、背は結子より少し高く、顔のバランスを見れると、多分相当なイケメンだと思う。 けれど、どう見ても子供なのだ。 恐らく、結子と同い年くらいの。 こういう役は大人がやるものじゃないのかな? それに、今日は木曜の平日だ。 子供がこんな時間帯に時代劇の撮影をするのだろうか? 結子が辺りを見渡すと、日がわずかに傾いたばかりだった。 不可思議なこの状況に、結子は今日逃げて帰るほどに嫌なことがあった学校のこともすっかり忘れいた。 おそらく、侍の持ち物とみられる弓を手に取る。 少し短い。弦に指をかけると、強い力で跳ね返され。 (これ、芸のためのものじゃない) 生あるものを殺傷するための弓は見たことがなかったが、なんとなくわかった。 武器としの弓を持つ者を結子は初めて見た。 寝転がる侍を振り返ると、神社の桜が風に流されて、頬に乗った。恐る恐る手を伸ばし、花びらを払う。触れた頬はまだ温かい。 口元に手をかざすと、息がわずかに返ってくるのを感じた。 生きてはいる。
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