第五章

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見上げると、目に差し込むほど明るい光を放つ月が空に昇っていた。 「あの姿では、天狗も夜しか動けまい。 恐らく、動くなら今からだろう」 時刻は夜の20時。甲冑を身にまとった時貞は、先程とうって変わって顔に力が入っている。 「敵の次の動きはわかるのかい?」 貴明が尋ねた。 「時を動かすには、場所と時間が重要です。 彼らは時の境界線と呼ばれる場所にいるはずです」 日和が返事をする。 「どこなの?それ」 「武家屋敷パークだそうだ」 今度は貴明が答えた。 「え、あそこなの?」 「あそこは、子の刻にこの土地で月が最も強い光を当てる場所となっています。 恐らくですが、また時を掛けようとするなら、あそこ以外は考えられない」 色々と制約があるもんだなと、結子は思った。 「でもさ。そしたら、あそこに忍びこまなくちゃダメよね。それって無理なんじゃない?」 「いや、残念なことに屋敷を囲う、外壁があるだろ。 実はそこにしかセキュリティーはない。だから、それを越えることができれば中には入り放題なんだ」 昔、武家屋敷パークでアルバイトをしたことがある貴明は、ここのセキュリティーがさほど大したものでないことを知っていたようだ。 「そんなので大丈夫なの?」 「そもそも取るものがないからなー」 言われてみればそうだ。 こんな地味な建物、誰も忍び込んだりしない。 「そしたら、天狗達は空を飛んで入るな」 時貞が空を見上げた。
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