第八章

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その時、内なる声が聞こえた。 ーーー的を射るのではない。 (あ、これは最初に弓道部を教えてもらった時に言われた言葉だ) ーーー的と心を一つに。 結子は自然と背負う弓に手が伸びていた。 その一連の動作は、今までで一番美しいと自分でも感じていた。 時貞もその美しさに心を奪われた。 月を背負う彼に向かいあい、弓を構える。 心の声がまた、聞こえる。 ーーー的を射るのではない。 ーーー的と心を一つに。 その瞬間、天狗がものすごい速度で迫りくる感じがした。 その身ではなく、彼の存在、魂とも呼べるものが結子の中に引きつけられ、道ができた。 同時に、彼の悲しさも決意も、ツグ姫を思う気持ちも一つになった結子にはわかる。 それでも、結子は矢を放つ。 その心を救うと信じて。 月に向かって、矢は放たれた。 飛んでいく矢は夜空を掛ける。 誰もがその行方へ見守った。 ツグ姫は悲鳴をあげる。 時貞は、祈るような瞳で先を追う。 ーーー矢は、玉を射抜いた。
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