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光の粒となって、玉はその形を消した。
全員が唖然とする中、月がぐらりと姿を揺らす。
日和が甲高く鳴いた。
「貴様!」
嘉次郎が降りてきて、衝撃で震える右手を、手首から握る。
そして、腰に下げていた刀を抜いた。
結子は青くなって、身を硬ばらせる。
そこに時貞が走ってきて、抱きしめるようにかばった。
だが、それを引き止めたのはツグ姫だった。
「嘉次郎様、もうおやめください。
私、お父様に頼んでみます」
思いがけない一言に、嘉次郎はツグ姫を見返す。
「しかし」
「嘉次郎様。私達は間違っていたのです」
ツグは大声を出して、天狗を制する。
「彼女の言う通りです。こんなことを繰り返しても何の解決にもなりません。
私くし達は常に何かに怯えて生きていかねばなりません。
ならば、祝福される道を選びましょう」
ツグ姫は目に涙をいっぱい溜めて訴える。その姿を見て、嘉次郎は自分の中の怒りが消えていくのがわかった。
「それで本当にいいんだな」
「はい。あなたとですから、何だってやれます」
たった数分のことなのに、ツグは別人になったかのようにその目に、光を宿していた。
二人が見つめ合う中、ようやく天狗二人と貴明が到着した。
「解決したんだな」
「うん」
結子はそう返事をした。
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