第九章

1/3

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ

第九章

結子達の生活はそれから、何事もなく過ぎた。 街に新しい標識が立つわけでもなく、月守町特有のルールができたわけでもない。 やはり、月守城はレプリカであるし、閑古鳥が鳴いていた。 地形にも変化はなく、あるとすれば風の中に夏の香りがまじりはじめたことぐらいだ。 家族も特にかわりない。 貴明は相変わらずプチ引きこもりだし、 母は嫌味の天才だし、父はさみしがり屋が治らない。 心配していた歴史は改変されていないようだった。 あれから、貴明と一緒に図書館に行ってこの土地の歴史を調べた。 飢饉が起こった当時のことは詳しく書かれていなかった。 困窮しすぎて、紙すら惜しんだせいかもしれない。 そして、二人で一緒に『月桜物語』を開いた。 お互い彼らの結末に、一人で立ち向かう勇気がなったからだ。 「第13章までは同じだな。 問題は第14章だ」 二人は意をけして、本を開く。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加