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第九章
結子達の生活はそれから、何事もなく過ぎた。
街に新しい標識が立つわけでもなく、月守町特有のルールができたわけでもない。
やはり、月守城はレプリカであるし、閑古鳥が鳴いていた。
地形にも変化はなく、あるとすれば風の中に夏の香りがまじりはじめたことぐらいだ。
家族も特にかわりない。
貴明は相変わらずプチ引きこもりだし、
母は嫌味の天才だし、父はさみしがり屋が治らない。
心配していた歴史は改変されていないようだった。
あれから、貴明と一緒に図書館に行ってこの土地の歴史を調べた。
飢饉が起こった当時のことは詳しく書かれていなかった。
困窮しすぎて、紙すら惜しんだせいかもしれない。
そして、二人で一緒に『月桜物語』を開いた。
お互い彼らの結末に、一人で立ち向かう勇気がなったからだ。
「第13章までは同じだな。
問題は第14章だ」
二人は意をけして、本を開く。
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