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彼の迷いない瞳は強い決意を表していた。
「待って、なんでそうなるの?」
「お前が言ったのだろう。
このままではまずいと」
(いや、そうなんだけど……)
どう返事をしたらいいものかと、考えあぐねている間に二人は「楽しみだな」と話している。
しかし、このまま二人を放っておくこともできなかった。こんな格好で街をうろついたら、確実に好奇の目にさらされてしまう。
恐らく、SNSにアップされて、人だかりができて、夕方にはネットニュースになる。
彼らには目的があるようだが、悪目立ちすれば達成するのは困難だろう。
「あのさ、お世話とかは無理かもしれないけど、
まぁ、相談くらいなら……っっ!」
言い終わる前に、侍の首に黒い糸が絡みついた。
「え?」と言っている間に、糸は時貞の首を絞め上げる。
「かはっ!けはっ!」
「ちょっと!」
糸が引かれ、時貞の体が後ろに傾いだ。結子はとっさに飛びつき、連れて行かれようとする体を食い止める。
が、飛びついたはいいものの。
首はますます締まっていき、時貞の目は血走り、顔が変色していく。
「え、どうしよ!」
「娘殿!刀を!」
日和の声で、結子は時貞の帯刀していた刀を片手で引き抜いた。
勢いで抜いたはいいものの、予想外の重さに体が前のめりになる。
「とにかく、振り回して下さい!」
幸いにも、夕日が糸を照らしてくれていた。
キラキラと宙で光るもの目がけて、結子は刀を振り回す。
感触はなかったが、光が左右や上下に離れ、
時貞の首から黒い糸が消えた。
「げっは、ごっほ、ごっほごっほ」
喉で詰まっていたものが一気に流れ込んだのか、時貞は膝をついて激しくむせた。
「大丈夫?!」
時貞が伸ばす手に刀を渡してやりながら、結子はその背をさすってやる。
すると、神社裏の山手から若い男の声がこだまする。
「我が、羅城蜘蛛の糸を断ち切るとは、さすが名刀、薄氷清丸。
しかし、ここまで追ってきた時貞様にも感服いたしますぞ」
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