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第一章
ある日、侍を拾った。
中学2年になったばかりの春。
家には帰りたくなくて、彷徨いたどり着いた神社でそれを拾った。
小さく古びた神社は、地元の氏神様でいつも誰もいない。
理由としては、住宅地より少し離れた山の上にあるので、人が立ち寄ること少ないからだ。
その境内に奇妙な格好の人が倒れている。
この近所で、時代劇の撮影でもあるのだろうか?
それで、そこの役者さんが迷子になって、ここで眠ってしまったのだろうか?
そう思うほど、彼は侍だった。しかも、戦国時代の。
大河ドラマに出てくるような、黒と朱色の甲冑を着て、足元は草履、腰には刀もあり、側には弓と矢筒が投げ出されている。
髪なんて、ポニーテールにして背中まである。
オールバックにまとめられた生え際を見た。どうやらウィッグじゃない。
「私よりきれいじゃん」
と結子は思わず自分のショートの髪をいじりながら呟いてしまった。
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