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「警部! 二人が到着しました」
警察官1が警部に告げた。
警部の顔は苦虫をつぶしたような顔だ。
俺たちがそんなに邪魔かよ。
俺は相棒の顔をちらりと見た。ガタイのいい相棒は気にしてないようだ。
よかった、後輩は大切にしないとな。あれ、こいつ、おニューのスーツか!洒落てるじゃないか。スリーピースでキマッてる。 ま、かくいう俺もおニューのスーツだけどな。
見てくれ、俺を……
俺は背広のボタンを開けて、えりをパンと張った。
ーーふ、キマッたな。
俺はちらっと相棒の顔を確認した。クチビルの左端が歪んでいる。
ーー俺より目立とうなんて100年早い。(俺ももう1着スーツつくるか)
俺たちは現場の奥の方へ進んだ。
俺たちはエービーコンビと言われている。 俺がエーの栄一。あいつがビーのビルだ。 あいつがビルと言われている理由は知らない。 知りたかったら今度聞いておくよ。
「被害者は? 」
俺は聞いた。
床に寝そべっているのが被害者だ。
見ればわかる。 でも一応聞くのが現場の規則だ。 なぜならば、被害者は一人とは限らないからだ。
「女性一人。腹部を刺されています。」
近くにいた警察官2がおれに教えた。
「それと……ダイイングメッセージのようなものが」
「なに! ダイイングメッセージだと! 」 俺とビーは色めきだす。
そうこなくては!来た甲斐がない。
「あれです」
警察官2は案内する。
「あれ? 先輩、あれですか?」
相棒のビーが先に反応した。
「あの二つの記号のような?先輩、みえますか」
床には指で書いたと思われる、赤い血文字が残されていた。
英語のUを二つ書いたのか。それとも……
「おしり!これ、おしりじゃね!」
俺は閃いてつぶやいた。
これで一気に事件は解決だ。
「いや、先輩。これはフタコブラクダのこぶですよ」
「どう考えてもおしりだろ」
俺とビーは意見を出し合う。
「きみたち、ふざけているのか」
警部がやってきて眉をひそめた。
「そんなにふざけたいなら、来なくていいい!帰れ!!」
警部の雷が落ちた。
俺とあいつは全く心に堪えてなかったが、「はあ」とだけ返事をした。
返事をするのが社会人のたしなみだ。
覚えておいてほしい。いかなるときも返事は大切だ。
「どうみてもあれはmだろ!」
警部は俺らの背中越しに吐き捨てるようにいう。
警部殿は男の更年期なのかもしれないな。大丈夫だ、俺は理解あるぜ。 男だってつらいんだ。
「フッ、これでもう事件は解決さ」
俺は昨日切ったばかりの前髪をさらりと流した。
我ながらかっこいいと思う。
「先輩もわかったんですね、さすがです」
ビルはニヤリと笑った。
後輩のくせにどこまでも上からの発言なのが気に入らないが、俺は大人だ。そんなことでは怒らないさ。
俺は「帰るぞ」と相棒のビーにいう。
「おい! おまえら!! 勝手に帰るな!! 」
警部の声が現場に響く。
「犯人が分かったなら、言っていけ」
ドアを開けようとしている俺たちに警部はいう。
バカだな、言うわけないじゃないか。
そしたら面白くないだろう。警部殿はわかってないな。
「はははは」
俺とビルはふたりで一度くるりとターンをし、背広の前を開け、ポーズをとる。ここは一発ウインクもしとくか。
警部はバタンとドアを閉めた。
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