シノちゃんと私

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 従業員用の部屋で、私は50代の男性の店長と面接をした。彼は私の履歴書に目を通した後、どのくらい働けるのか、家族の了解は得ているかなど丁寧に質疑応答を行うと、私を採用してくれた。 「この駅は各路線への乗り換えの中継地点になるんだ。構内にはコンビニや書店はあるが、喫茶店はここ1つだけ。だから仕事中のサラリーマンが利用することが多いかな。仕事中に何か困ったことがあれば気軽に聞いてね」  私が勤務する夕方から夜の時間は、高校生のアルバイトが主になっている。日中の時間帯で平日の昼間は女性のアルバイトが数名働いている。だが、婚姻している者が多く、扶養の範囲内での勤務を希望しているうえ、保育園への迎えや夕食の支度があり、遅くまでは残れない。そのため、夕方からの勤務が可能な人を探していたと言う。だが、この喫茶店は個人経営のため、時給面はこの辺りの最低賃金である900円が限界なのだそうだ。そうなるといくら募集をかけても他の高時給の求人にはどうしても引けを取ってしまう。夕方からの高校生は他のバイト先を選ぶ人が多くて、なかなか人手が集まらない。そんな人手のない中で、シノちゃんが私を紹介してくれたのは、店長としては、とても助かると彼は微笑んで迎えてくれた。 「シノノメ君の友達なんだってね。彼は愛想はないが、仕事が早いんだよ」 「そうなんですか」  私は勤務中のシノちゃんを想像する。服装がジャージーから喫茶店の制服に変わっただけに違いない。
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