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「何故、この会社を受けたんだ」
面接がぐだぐだのうちに終わったあと、帰ろうとした花鈴は人事部長に呼ばれ、専務室に来ていた。
二人きりになった途端、光一は花鈴にそんな文句を言ってくる。
いや、貴方が居るって知らなかったからですよね~……。
だって、何処の誰とも名乗らなかったじゃないですか。
そして、こちらも名乗らなかったので、光一も履歴書を見た段階では気づかなかったのだろう。
……ひどい写真だったしな、と花鈴は思う。
あの日、花鈴はたまたま出会った光一に脅され、ドレスを買われて、結婚式の写真を撮らされた。
「就職した途端、役員の連中から降るように見合いの話がやってきて、鬱陶しいんだ。
だから、事情があって籍は入れられないが、学生結婚した最愛の妻が居る、という設定にしたい。
お前は高校生だし、普段は化粧もしてないようだから、道で役員のジジイどもと出会っても、わからないだろう。
っていうか、まず、接点もないだろうしな。
ドレスもやるし、金もやる。
俺の写真だけの妻になれ」
そう言いながら、店に連れ込もうとする光一に、花鈴は抵抗して逃げようとした。
いきなり、こんな何処かの御曹司っぽいイケメンが金をやるから、結婚しろと言ってくるとか。
写真の中だけのことにしても信じられない。
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