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新手の詐欺!?
とさっきまで、誰か連れ去ってくれないかなと思っていたくせに、花鈴は逃げ出そうとした。
だが、その弾みで思いっきり、光一の足を踏んでしまい、光一が顔を歪める。
「ああっ、すみませんっ」
よく手入れされた光一の靴にくっきり、花鈴の靴の跡がついていた。
朝の雨で学校のグラウンドがぬかるんでいたせいだろう。
黙って靴を見下ろしていた光一が言ってくる。
「お前、俺の靴を汚したな」
無礼討ちかっ?
と花鈴は身構えたが、光一はガックリ来た感じで言ってきた。
「この靴は、うちの執事の田畑が一生懸命磨き上げたものだ。
田畑は通常、靴磨きは他の使用人に任せているんだが。
俺が働き出してからは、頑張れという思いを込めて、自分で磨いてくれるようになったんだ。
だから、俺は外回りのときも、靴を汚さぬよう、気をつけている。
靴を汚すと、田畑の思いまで、汚してしまう気がしてな」
そうですか。
そこはちょっといいお話ですね、と思っていると、
「なのに、お前、今、思いきり、泥をつけてくれたな」
と光一は花鈴を睨んでくる。
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