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そんなこんなで、四月を迎え、花鈴は光一の居る会社に入社した。
知らない大人たちに囲まれ、新しく覚えることばかりの毎日。
神経をすり減らしながら過ごしていると、目の前の上司が仮の夫であることなど忘れそうになる。
……しかも、向こうは綺麗に記憶から消し去っているかのように容赦ないしな。
そんなことを思いながら、花鈴はロッカールームに向かった。
ちょっと時間が空いたからだ。
「お疲れ様です~」
と言いながら入ったが、誰も居ないようだった。
しめしめ、と花鈴は自分のロッカーを開ける。
最上段の棚にそれはあった。
折りたたまれたクリーム色で、フカフカのブランケットだ。
花鈴は、それを手に取り、頬ずりをする。
ああ、気持ちいい。
和むな~……。
常に気を張っている社内でも、このブランケットに触って目を閉じると、家のベッドに寝ているような気がしてきて、リラックスできる。
ホッと一息ついたそのとき、ロッカールームの扉が開く音がした。
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