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花鈴は慌ててブランケットを押し戻し、ロッカーを閉める。
そんなに背は高くないが、細身なので、長身に見える美人が入ってきた。
ちょっと目許がきつい彼女は常務の秘書の堀口詩織だ。
「おっ、お疲れ様ですっ」
と花鈴は慌てて頭を下げる。
「あら、西辻さん。
入社一週間で、もうサボり?」
研修のとき、美人だけど、おっかなそうな人だなーと思っていたのだが。
いやいや、第一印象で決めてはいかん、とそのときは思い直した。
だが、研修から此処まで、約一ヶ月。
第一印象というのは、意外とハズレないもんだな、と思っていた。
「はあ。
ちょっとホッと一息つこうかと」
と言うと、詩織は花鈴の隣のロッカーを開けながら言う。
「こんな、なにもない場所で、なにをどう一息ついてんのよ。
リラクゼーションルームで珈琲でも飲めばいいじゃない。
短時間なら怒られないわよ」
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