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「いやあ、まだ慣れないもんで、ずっと緊張しっぱなしで人に疲れちゃって」
リラクゼーションルームには見知らぬ社員の人たちがたくさん居るので、余計気が休まらない気がする。
「ああ、そうかもね。
そういえば、私も最初、そんな感じだったわ」
と詩織が言い出したので、思わず、えっ? と言って睨まれた。
「……あんたね。
私にも初々しい頃があったのよ」
いやいや。
なにも言ってないじゃないですか、堀口さん、と思いながら、花鈴は苦笑いする。
詩織は、バン、と音を立ててロッカーを閉めながら、
「あんた、私のこと、嫌なお局様が居るな、とか思ってるんでしょ」
と喧嘩腰に言ってきた。
「えーと。
堀口さん、まだ、お局とかいう年ではないですよね?」
と花鈴が言うと、
「でも、あんたたちには私が主みたいに見えるでしょって言ってるの」
私もそうだったから、と詩織は言う。
「入社したばっかりの頃ってさ。
二、三個上の先輩がすごい年上で権力持ってそうに見えてたのよね。
でも、毎年、どんどん若い子が入ってくるから、あんたもすぐにおばさん扱いよ。
慣れてきたら、人間、態度がデカくなるもんだしね」
はあ、と思いながら、花鈴は、二、三年先の自分を想像してみた。
詩織のように、社内を用事で回るフリして、友だちの部署でしゃべる自分。
リラクゼーションルームのいい席を仲間たちと独占してくつろいでいたりする自分。
「……いいですね」
「なにがよ」
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