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すぐにエレベーターが来たので、秘書らしく、サッとボタンを押そうとしたのだが、光一の方が近かったので、先に押されてしまった。
そのまま待っていると、光一が振り返り言ってくる。
「なにしてるんだ。
早く乗れ」
「えっ？ 私がですか？」
「他に誰が居るんだ。
いつまで俺に押させておく気だ」
誰か来たらどうする、と光一は言うが。
いや～、秘書にまで気を使ういい上司だと思われるだけなんじゃないですかね。
逆に私は、とんだ駄目秘書だという烙印を押されてしまうわけですが、と思いながら、では、失礼して、と花鈴は急いでエレベーターに乗り込んだ。
遅れて乗ってきた光一に、
「ありがとうございました」
と花鈴は深々と頭を下げる。
光一は前を見たまま、うん、と言って、そのまま黙っている。
……気まずい。
死ぬほど気まずい。
今、この瞬間に、エレベーターから飛び降りるか。
天井の蓋を開けて、エレベーターの上部分に潜んでいたい、と本気で思ってしまうほどに気まずい。
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