4299人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
「誰も居ませんし。
そんなつれない雰囲気を醸し出されたら、花鈴さんも寂しいですよね」
ニコニコと人のよさそうな顔の監査役にそんなことを言われ、困る。
こ、これはもしや、よそよそしくなくしろと言うのですかっ?
遠慮なく、ラブラブな感じに帰れと言うのですかっ?
写真撮るときでさえ、側に立ってただけのこの人とっ?
光一もフリーズしていた。
もしや……結婚話を疑われて、試されているのだろうかと花鈴は勘繰る。
この監査役も実は見合い話を勧めたり、仲人をしたりしたいのかもしれない、と思う花鈴の横で、光一は、
「ありがとうございます」
と覚悟を決めたように言い、花鈴と手をつなごうとした。
よく考えたら、そこは、
「いやいや、こんなところでは恥ずかしいですよ。
お気遣いありがとうございます」
と流すのが正解だったし、普通の反応だったのだろうが、なにしろ、二人ともテンパっていた。
最初のコメントを投稿しよう!