数年ぶりに旦那様に会いました

25/89
4299人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
「誰も居ませんし。  そんなつれない雰囲気を(かも)し出されたら、花鈴さんも寂しいですよね」  ニコニコと人のよさそうな顔の監査役にそんなことを言われ、困る。  こ、これはもしや、よそよそしくなくしろと言うのですかっ?  遠慮なく、ラブラブな感じに帰れと言うのですかっ?  写真撮るときでさえ、側に立ってただけのこの人とっ?  光一もフリーズしていた。  もしや……結婚話を疑われて、試されているのだろうかと花鈴は勘繰(かんぐ)る。  この監査役も実は見合い話を勧めたり、仲人をしたりしたいのかもしれない、と思う花鈴の横で、光一は、 「ありがとうございます」 と覚悟を決めたように言い、花鈴と手をつなごうとした。  よく考えたら、そこは、 「いやいや、こんなところでは恥ずかしいですよ。  お気遣いありがとうございます」 と流すのが正解だったし、普通の反応だったのだろうが、なにしろ、二人ともテンパっていた。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!