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年明け1月25日は、エタエモの新ゲーム発売予定日。
事前調査の結果は上々。
そこに向けてエイブと共同で宣伝、広報が大忙しだ。
真は水菜に作ったダイエットアプリを、健康アプリに変えて検討中だ。
真の手からゲームはもう離れている。
5ヶ月になった水菜は、少し目立ち始めたお腹で仕事をしていた。
言葉通り、時々、本当に急に階段を上がり、失礼しますと言う。
「んー?」
モニターを見続けたまま返事をする。
「いえ、そのままで結構です。ソファを少しの間、使わせて頂きます。」
「え?」
目を向けるといそいそと寝る支度をして、横になりすやすや寝始める。
「い、いいけど…急だな?そして寝るの早いな……。」
疲れているというわけではないと思うが、水菜はここの所、少し時間があるとうとうとしている。
ー「悪阻はないの。軽いかな?正確に言えば…。ただね?ひどく眠いの。」
11月頃にもそんな事を話していた。
空の時に、ネットでしっかり妊婦については調べたつもりではいたが、まだ知らない事が多い。
しばらくはネット検索の日々だった。
(眠気を感じる妊婦もいる……。なるほど…。)
そして5ヶ月になった今も、眠くなると社長室のソファに横になりに来る。
これがまた…動物的と言うか…何とも動きが形容し難く、可愛らしいので黙って見守る日々。
真にも安心出来て癒される瞬間だ。
(モニターから顔を上げると、気持ちよさそうに眠る水菜…。
…………いい!! 寝顔、いい!!)
冷たい視線を投げられるのは分かっているので言わない。
2月から新しい仕事。
今度はこれに全力で頑張りつつ、家に帰るのを忘れない…これが今年の真の目標だった。
年末に家飲みをした際に幸人と話をした。
エイブの受付の子についてこっそり聞いた。
「まぁ、あれだ…若気の至りだ。色々、あったんだよ……。」
珍しく幸人が口を濁した。
「俺の為に会いに行ったんじゃないんだな?」
「真の為もある。俺も自然消滅で…今、どう思ってるのか、恨まれているのか聞きたいと思っただけだ。」
「お互い、若い頃はロクでもなかったんだな……。」
幸人の肩を抱いた。
「お前には…言われたくない!俺は一人位だよ。」
とそっぽを向かれた。
どうしようもない俺たちの若い頃は、自由過ぎて自由な分責任は重かった。
逃れる為に遊び、それが今を苦しめる。
「終わったか?もう平気か?」
真は自分にも言い聞かせる様に聞いた。
「ああ、梨香も納得してくれた。昔の事だ。ただ……梨香は当時、全く気付いてなかった事がショックみたいだったな……。」
「まぁ、いつも一緒にいたしな?」
こっそりと二人で仕事部屋でグラスを合わせた。
当時は…多分、幸人の言う当時は……起業したばかりの頃だろう。
その時には幸人と梨香はもう付き合って数年経っていて、梨香には過去の事でも自分の知らない浮気なんだろうと思えた。
「梨香も、自分の中で決着着けたんだな…。」
「だなぁ。今頃、来るとか…ちょっと怖いな?」
年明けだと女性陣が騒いで呼びに来るまで、二人でちびちびと飲んでいた。
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