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「あ、そこ、水菜も気付いた?」
ランチに来て、二人で本日のプレートを食べていた。
仕事の疑問を梨香に話してみた。
「梨香も?」
「うん、引き継ぎの時は会社全体のスケジュールを把握する様に…そう言ったはずなんだけどね?今、56名?全体でいるでしょ?会社全体の把握していた時は33かな?人数が増えたから無理ですって言われちゃうとね?
実際、全部のスケジュール管理は無理でしょ?」
「うん、でもねぇ?真は、いえ…社長は会社全部の仕事を同時に進める事もあるでしょう?足りないSEチームに、応援に行かせる事もあるし、把握はしておいた方が良くないかな?」
「応援もね?今はチーム同士で相談するし、幸人もあんまり首は突っ込まないんだ。だから難しいかな?」
「そっかぁ…。全部は無理でも全体の大まかな流れの予定はいいよね?無理じゃないよね?」
水菜が聞くと梨香は笑う。
「無理じゃないよ?私は幸人の営業分はこっそり把握してる。
急に何かあっても対応出来るしね。こっそりだよ?」
と、笑う。
「室長がこっそりかぁ……。じゃあ、私はもっとこっそりやってみる。」
「うん。まぁ、若い子には若い子のやり方があるし、少し見守ろう?」
「年寄りみたい……。」
「ひどいなぁ…。水菜よりは上だけどさぁ…。31だよ?水菜いいなぁ…私よりいくつ下だっけ?3?」
「3…かな?梨香、真とは同級生だもんね。とても幸人さんと真が同じ歳とは思えないけど…。」
「幸人は落ち着いてて、真は……まだ子供かな?でも、随分、大人になったよ?水菜のおかげだね。」
二人で顔を見合わせて笑った。
秘書室に戻り、荷物を置いてからお茶を入れに休憩スペースに行った。
休憩スペースは、窓から外が見えるようにカフェの様な作りになっていて、細長く狭い道の窓側がカウンターテーブルと椅子。
壁側にミニキッチンとコーヒーメーカーなどが置いてある。
好きに飲んで休憩していいスペースだ。
最近要望した、抹茶が入れられるマシンが入っている。
それを淹れて、小さなカップを次の人の為にマシンから取り外し、ゴミ箱を開けた。
見た事のある色の物……。
少し手を出して持ち上げた。
(これ……私のお弁当……。)
わけが分からなかった。
そうされる理由も、意味も、頭の中は真っ白だった。
(きっと、食べる前に落としたとかだわ。悪い事しちゃったわね。
気にしてるわ。知らないふり…した方がいいわよね?)
あまり気にせずに部屋に戻った。
秘書室に入ると笑顔の倉田がいて、
「これ、洗っておきました。美味しかったです。ごちそうさまでした。」
と、お礼を言われた。
「ううん。こちらこそ、食べてもらってありがとう。」
上手く笑えているかが心配だった。
人の笑顔の裏にある悪意が水菜は怖い。
彼氏でさえも、笑顔の裏で裏切るのだ。
「あ、社長室に忘れ物してきたから、取ってきますね。」
社長室に上がると身体を抱きしめた。
真が買ってくれた洋服が水菜を包んでいて勇気づけられた。
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