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何でダメなの?
「社長、コーヒーをお持ちしました。」
「ああ、ありがとう。そこ置いといて。」
スーツを脱いで上着を掛けながら真は言い、時計を見た。
「水菜、まだいた?」
「いいえ、10分程前にお帰りになりました。」
「そうか。倉田さんも少し楽が出来るといいけど。一人よりはマシでしょ?」
「ああ、変わりませんよ?大丈夫です。」
倉田は笑顔で答えた。
「変わらない?」
椅子に座りながら真は聞き返した。
「仕事は変わりません。誰が来ても同じです。私は私の仕事をするだけです。」
「なるほど…。確かにそうですね。では、この資料をコピーしてSEのみんなに配って下さい。お願いします。」
「畏まりました。失礼します。」
(既婚者が駄目って誰が決めたの?
好きなら自由でしょ?自由恋愛でしょ?)
家でゴタゴタしてた事もあって、彼氏とも別れて、少しむしゃくしゃしていた。
いつもニコニコしてて社長の前では無表情になる石原水菜、倉田は彼女が気になっていた。
それが羨ましい憧れの気持ちから変わって行くきっかけが、プライベートの破綻だったのだろう。
(何が駄目なの?)
そんな風に考え始めた。
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