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「タクシー呼んだけど、途中まで乗って行く?」
「助かるけど、いいの?早く行かないといけないでしょ?」
「あそこの交差点まで乗っていけばいいわよ。少しは楽でしょ?そこまで方向は同じなんだし…。」
「お言葉に甘えちゃおうかな?」
「甘えちゃえ!甘えちゃえ!それで、お夕飯お裾分けしてくれると助かる。」
「あはは、いいよー。病院行って、夕飯作るのはきついもんね。何でもいいなら差し入れるよ。」
「助かる!ありがと、水菜。こういう時、隣に友達いると有難い。」
梨香はこう話しているけど、実際、あまり頼ってくる事はない。
お互いの家も頻繁に往き来する事もない。
会社で会うからだとは思うけど、食べきれない時にあげたりもらったり、どうしてもの緊急の時しかお互いの家には上がらない。
馴れ合いをしないように気をつけているのだと思う。
こんな時には頼ってほしいと思う。
だから嬉しいので、大量に材料を買い込んで帰宅した。
マンションの1階にはスーパーが入っていて便利だ。
「そーら?ご機嫌だね?空にもお芋のサラダ作るからね?」
エレベーターに乗りながら空に話しかける。
帰宅して、空をベビーベッドに移すと何故か泣き出す。
「え?どうしたの?」
焦って抱き上げると空は泣き止む。
下ろすとまた泣く。
「嘘でしょ?お母さん、お夕飯の支度するのよ?いつもいい子で待っててくれるのに…。」
梨香に差し入れすると言ってしまったし、出来ないでは迷惑を掛けてしまう。
仕方なく水菜は空を背中に負んぶして、身体を揺らしながら、夕飯の支度を開始した。
一段落してから、ふと思いついて空の熱を測った。
念の為に服を脱がせて身体を見た。
「蕁麻疹…なし!お熱……なし!オムツ、よし!」
(リビングに寝かせても泣きはしないのに、何でベビーベッドで泣くの?)
「よいしょ、お夕飯の続きして、後でベッド見るね?もしかして、おねしょかな?」
空をこちょこちょして、笑い顔を見て安心してからまたおぶった。
ハンバーグを大量に作り、サラダを大きめのタッパーに入れた。
細切りの人参とコーン、キャベツの千切りサラダ。
ハンバーグは大きなお皿に5つ載せて、中鍋にあさりのクラムチャウダーを入れ、梨香の家に配達に出掛けた。
インターホンを鳴らすと、梨香が顔を出す。
「水菜、ごめんねぇ…。」
「ううん、お皿に盛ればいいだけになってるから。献立に悩んでしまって、クラムチャウダーなんだけど、風邪ひいてても食べれるかなって思って。」
「本当に助かる!わぁ、美味しそう…。ありがとう。真はまだ?」
「うん、遅くなると思う。立花さんは?」
「まだ。7時には間に合うように終わらせるって連絡はあった。」
「梨奈ちゃんは?」
「うん、扁桃腺炎だって。暫く熱は高いかもって言われた。」
「そう。あ、じゃあ、側にいてあげて。またね?お大事に。」
「ごめんねぇ…。本当にありがとう。遠慮なく戴きます!」
梨香と別れて、水菜も急いで部屋に戻る。
空を背中に負ぶったままだ。
「さて、空くん。君の不機嫌の原因を名探偵が解きあかそうじゃないか!」
言いながら玄関の鍵を開けて部屋に入り、ベビーベッドに直行した。
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