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帰宅して干した布団を入れ、セッティングする。
「いいお天気で良かったねぇ、空。お布団ふかふかだよ?
よし、寝ようか?」
ベッドにそっと空を置いた。
少し泣きそうになり愚図ったが、顔を見ながら手を繋いでいたら少しずつ落ち着いたのか、いつもの様にお気に入りのオモチャで遊び始めた。
「良かった…。そろそろ柵は嫌なお年頃ですか?そろそろ寝返りもするね。
ハイハイももう直ぐかな?足の力も……うん、強いねぇ。
ねぇ、空…ひいおじいちゃんに会いたい?」
結婚式から一度も水菜は実家に帰っていなかった。
忙しいというのもある、真が正月もお盆も一人でカタカタ音を立てている事も理由の一つだが、言い訳とも言える。
帰ろうと思えばいつでも帰れるのだ。
小さい頃から自分を溺愛していた祖父と、信頼していた母が、見合いを薦めて外堀を埋めていくあの感じが、どうにも頭を離れてくれずに、実家近くに近寄る勇気がなかった。
電話はこまめに入れていて、空の写真も送っていたし、真に至っては、DVDを作って送っていた。
ぼーっとしながら空に話す。
「おじいちゃん、好きなのよ? お母さんね、おじいちゃんの事大好きだった、ううん…今も大好き。だからね、ショックだった。
お母さんの知らないところでお見合いを決めて相手を決めて、どんどん話が進んでいる事が、大好きなおじいちゃんがそんな事をするなんて考えてもいなかった。だから、会うのが怖い。責めてしまいそうだし、喧嘩しちゃいそう。でも、空は会いたいわよね?おじいちゃん……もう歳だし…。」
呟いて、おもちゃを振る。
空が楽しそうに笑っていた。
夜、9時過ぎに真は帰宅した。
カウンターテーブルに食事を用意する間、真はベビーベッドの柵に顔を乗せ、眠る空をずっと見ていた。
「出来たよ?そんなに見なくても…毎日、少なくても10分は見ているんでしょう?」
と、水菜は真を呼んだ。
「は?何、言っちゃってるんだ?帰って来て、癒しを求めただけじゃないか……いただきます。うん!うまっ!」
「コロッケ、買って来たお惣菜だけどね?」
お茶を二つ用意して、水菜も隣に座る。
「水菜とセットだから……。」
「なんか…私に言う事はない?」
冷たい視線を送る。
「な、いよ? 何にもしてないよ!悪い事は!浮気もしてないし、アイドルの写真集も買ってない。」
「そうか……。アイドルの写真集は欲しかったのね?」
くすくす笑いながら水菜が言うと、食事を続けながら、
「でも、買ってない!」
と自慢気に答えた。
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