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「買っても別にいいし……。そうじゃなくて、託児所に顔を出してるでしょ。」
バレたかぁという顔を真はして、小さな声で聞く。
「お父さんが会いに行くのは…駄目か?」
(そういう顔で言われるのは…卑怯だなぁ…。)
と、水菜は思いながら答える。
「駄目じゃないけど、他の子もお母さんに会いたくても我慢してるわけでしょ?頻繁に会社の社員が託児所にかわるがわる顔を出したらどうなると思う?社長がしてたら他の人もいいんだと思わない?」
「ん……まぁ、そうかな?」
「それに、真は空を見て満足だけど、お昼寝から目を覚ましたお友達が、空の所にいる真を見たら驚くでしょう?泣き出したら大変なのは保育士さんだよ?毎日は迷惑だと思う。まあ、時々なら、いいって保育士さんも言われていたから…。」
そこまで言うと真の顔が明るくなる。
「時々ならいいんだな?本当だな?」
「う、うん…。時々なら…いいって…。」
驚いて、キョトンして水菜が答えると、
「やった!もう、二度と行くなって言われるかと思った。
水菜、目が冷たいんだもん……。あぁ、良かった。楽しみが残った。」
と言い、真はばくばくと食事を再開した。
「冷たい目って……ねえ、酷くない?」
真に冷たい視線を送った。
真はお風呂から上がると、空のベビーベッドを寝室に移動させる。
その間、空は水菜が抱いている。
産まれてからこれも日課になって来て、真が泊まりでいない日は大きなベッドに空と二人で眠る。
「二つ買えば良かったと思うよ……。」
真が移動させながら呟く。
「またぁ…。いつも言うんだから。勿体ないでしょ?ベビーベッドだって勿体ないと思ったのに…。」
田舎出身の水菜には、赤ちゃんは昼間は座布団で寝かせて、動き出したら、柵を作る、と言うイメージしかなかった。
ベビーベッドは柵の役目も果たしてくれるし、1歳位までは、自分では降りられないので安全で安心感はある。
それをリビング用と寝室用に二つ買おうとした真を止めるのに苦労した覚えがある。
「そんなに嫌なら、ベッドに寝かせるから…別に動かさなくても…。」
空をポンポンと優しくあやしながら、水菜は言う。
「駄目!空は可愛いし、一緒に寝るのも好きだけど、お酒飲んじゃったし、疲れてるから、寝返りで潰したくない!」
「あんなにおっきいベッドで?それに私、間に入るわよ?」
「水菜も、潰したくない!」
「…………じゃあ…私が使ってたベッドで空と寝ようか?そうしたら動かす必要もないし、寝返りも心配しないでいいよ?」
「絶対、嫌だ!よし、移動完了。いい運動だ。」
(運動にはなってないと思う…。移動距離僅かだし…。)
と、思うが言わずに褒める。
「ありがとう。さぁ、お父さんが移動してくれましたよ?寝ましょうね?」
空を寝かせてポンポンと眠りを誘導すると、真がクッションをベビーベッドの頭の上や下に置き出した。
「…何を…し始めたの?」
「いや…最近、動くから、寝相、対策!うん!周りにクッション置けば、柵にも当たらないし…。」
「ふぅん……。」
(なんかなぁ……。)
変だなぁと思いながら、その日は眠りに就いた。
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