仕事をして!

8/10
前へ
/96ページ
次へ
翌朝、真から提案をされる。 それにも水菜は驚きを隠せなかった。 カウンターテーブルに、ご飯、お味噌汁と切り干し大根の煮物、玉子焼きとウィンナーは一つのお皿に載せて出した。 ベビーベッドの空を見ながら水菜も食事を進めていた。 「なぁ…今年のお盆、3日位、取ろうと思うんだ。」 と、いきなり言い出した。 「うん……。別にいいと思うけど?」 休みを取るのに急にどうしたのかと水菜は思った。 「それでさ…。」 珍しく話にくそうに真が口籠もる。 「どうしたの?」 「うん…。水菜が嫌じゃなければだけど…水菜の家に、実家に遊びに行きたいんだ。俺、行った事ないし、空にもね、見せたいと思うし、生の空も、水菜のご両親に会わせたいし…。」 「なまの空って……。まぁ、気持ちは有り難いし、分かるけど無理してない?」 「俺も見たいんだ。水菜の育った所。駄目かな?泊まりが無理そうなら、近くでホテルでもとってさ。二泊三日。」 水菜は少し考えて空を見る。 愛息子は親にも会わせたいし、祖父にも会わせておきたい。 「ねぇ、真?」 「なに?」 「私ね……おじいちゃんや母の勧めたお見合いを断ってしまったのね。」 水菜は思い出すように話す。 「もう…昔の話だろ?おじいさんは式にもお見えにはならなかったけど、お母さんは来てくれたし、気にしてなかったよな?」 「うん…。おじいちゃんが来ないのは理由があるからで、お見合いの件とは関係ないんだけどね?おじいちゃん、私の事、溺愛してて、そのおじいちゃんの願いを聞かずに家を出て、真と結婚したから少し会いにくいんだ…。」 真は食事を終えて、水菜を見る。 「ごちそうさま。でも水菜、会いたいんだろ?行こうよ?空を見せにさ。 怒られるなら、俺が怒られるし…。だってさ、水菜と結婚したいと思ったのは俺なんだし…。」 「カウンセリングに通っていた話は…祖父にもしてないの。」 不安そうな顔で水菜は呟く。 「大丈夫、言わないよ。もう、過去の事だ。心配かけたくないんでしょ? 今回は空を見せに行く、俺が水菜の育った場所を見る。それでいいよね?」 「うん、ありがとう真。でも……。」 なんだか水菜には引っかかる物がある。 「んー?」 お茶を飲み、真は水菜を見た。 「なんだろう?何かが引っかかる……。」 と、考えながら水菜は言う。 「馬鹿だなぁ。何を考えているんだ?深く考える事じゃないぞ? まだ2ヶ月あるから、水菜、ご両親に連絡して、ホテル探しておくな?」 「うん…。でも、実家泊まれると思う。まず、電話してみるね?」 「じゃあ、その後でいいな、ホテルは。」 「そうだね。夜、電話するね。」 真はどこか挙動不審で、何となく、水菜には何かが引っかかっていた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4099人が本棚に入れています
本棚に追加