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真の車で一緒に出勤して、空を託児所に預ける。
「今日は来ませんので…ご迷惑お掛けしました。」
と、水菜が言うと隣で不満そうな顔をしたので、足を踏んだ。
「明日はいいよな?」
社長室に向かう途中の廊下で真は水菜に聞く。
「まぁ……そんなに会いたいですか?」
「当たり前だろ?水菜は会いたくないのか?」
「そんなわけないじゃないですか。一緒に居られるならずっと一緒に居たいですよ?でも、仕事も大事です。専業主婦も考えましたけど、真が言ったのよ?」
「え?俺?」
真は分からない顔をして、水菜の横を歩いた。
「子供の側にいて専業主婦も素敵だけど、働ける環境があるなら、それを選んでから無理だったら辞めたらいいって…。それもそうだなって思ったし、せっかく頑張って来た仕事だし辞めたくないなぁって思ったから。」
「うん……俺も水菜が側にいた方がいい。空もずっと側にいてくれないかな。」
「社長室に空がいたら、真、仕事しないでしょ?仕事して?」
水菜がため息をついて言うと、真は笑顔で社長室に消えた。
「失礼致します。コーヒーをお持ちしました。私はこれで失礼しますが、何かご用はありますか?」
14時30分、少し早めに様子を見ることも兼ねて、社長室に顔を出した。
「心配しなくても、今日は行ってないよ?」
と、即、真に言われた。
「その様ですね?安心致しました。では私はこれで失礼致します。」
「もう帰るのか?送ろうか?」
「社長は今日は社内でフロアの方達と機械点検するんですよね?」
「まぁ、メンテナンス?」
「遅くなります?」
「フロア終わったら、社長室のもやるつもり。これは人には頼めないから自分でやらないと…。泊まるかも…メールするよ。」
「分かりました。ではお先に失礼致します。」
向きを変えて階段を降りる。
「水菜!気を付けて!」
「はい。」
くすりと笑い、水菜は階段を降りた。
少し気になっていた事に気付いた。
帰るとき、真はいつも送る?とか、空頼むな、とか気を付けてとか、浮気するなよ、男についていくな?…へんな奴を家にあげるな?など…何か一言言っていたのだ。
それがなかった事に気が付いた。
(空に会いに行ってたから、言わなかったのかな?)
事実、今日は空に会いに行っていなくて、そのひと言はあった。
そんな風に考えて家に帰った。
『遅くなる…時間読めないから泊まる。ごめん。』
という内容のメールが入った。9時を過ぎていた。
(他のSEも遅くまで今日は残っているはず…。)
水菜はおにぎりと玉子焼き、唐揚げを大量に作り、差し入れする事にした。
差し入れをしようと考えたのは、実家に電話した事を早く真に話したいという気持ちからでもあった。
手ぶらでは仕事中にお邪魔しにくいと考えたのだ。
タクシーを呼び、空のベビーカーも載せてもらい、会社に向かった。
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