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お昼になるとソファに移動して水菜の弁当を開ける。
最近、小さなタッパーが別に用意され、この中身がどうも苦手。
水菜が野菜から食べるといいんだって…と言い、野菜サラダが入っている。
野菜は苦手……生はもっと苦手。
水菜も知っているからあの手この手で工夫しているが、どうも食べる気がしない。
「失礼します。会議の追加資料です。うわぁ…美味しそうですね。」
倉田が階段を上ってきて弁当を見て声を上げた。
「サラダ、良ければ持って行くか?」
「えっ?いいです、悪いですよ。」
「毎日、付いてるから、一日位いいよ?女子は好きだろう?あとで容器、返してくれればいいから。」
サラダのタッパーを蓋をして渡した。
「本当にいいんですか?」
「ああ。」
「ありがとうございます。おにぎりだけだったので嬉しいです。」
そういうと、頭を下げて倉田は秘書室に戻って行った。
レタスと人参、ツナのサラダ。
チョップドサラダとかいうのを真似て作ってある。
流石にここひと月だから、野菜はもういいや、と思っていた。
「本日の予定は終了しました。何もなければ失礼しますがよろしいでしょうか?」
コーヒーを持って、確認に倉田が部屋を訪れた。
「ああ、帰っていいよ。お疲れ様。」
素っ気なくモニターを見たまま真が言うと、机の上にそっとタッパーが置かれた。
「ありがとうございました。とても美味しかったです。ドレッシングも入ってて…。お店で食べるみたいでした。ごちそうさまでした。」
「あ、ああ。いや、美味かったなら良かった。お疲れさま。」
「はい、失礼します。」
頭を下げて、上げる瞬間、髪がモニターに当たる。
「おい!」
「すみません!わ!」
「ぶつかる!!」
よろけた倉田を、モニター激突を避けて身体を受けた。
手で止めたが、止めた場所が悪かった。
悲鳴をあげて倉田は焦りながら、何度も謝りながら階段を降りて行く。
それを見送りながら真の左手はその形で固まったまま、立ち尽くしていた。
「でか………。柔らっ……。」
冷たい水菜の目が思い浮かび、我に帰った。
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