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『必要以上のボディタッチをしようものなら……。』
産休に入る前の水菜の言葉を思い出す。
(こわ!バレたら何を言われるか…いや、家を出て行く。
絶対にバレるわけにはいかない!でも、必要以上の……あれは事故だ。
緊急時だ。故意じゃない。バレてもいいんじゃないだろうか?)
考えながら帰宅する。
「おかえりなさい。」
笑顔で水菜が迎えてくれる。
お弁当箱を渡すタイミングで言うべきかどうかを悩む。
渡して言おうとした時、ベビーベッドの中で空が泣き出した。
お弁当箱を渡してベビーベッドに直行する。
「そ〜ら!どうした?お父さんだよ?ただいま。」
顔を出すと、少し笑う。
「笑った!水菜!笑ったよ!」
「良かったわね?あ、手を洗って来て?空、触る前に…。」
「ああ、そうか。ごめん。すぐ洗ってくる。」
洗面所に走る。
「ねぇ?真……。お弁当、どうだった?食べれた?」
キッチンから水菜が少し大きな声で聞いてきた。
珍しいなと思いながら返事をした。
「んー?美味しかったよ?」
洗面所で返事をして、廊下を歩いてリビングに入る。
カウンターの前で少し止まり、水菜を見て返事をした。
「いつも通り、美味しかった。どうかした?」
「……ううん。なら、良かった。」
水菜の笑顔に笑顔で返して、愚図り出した空の所に向かった。
幸人みたいにコミュニケーション能力が高ければ、この時、水菜の様子に気が付いたのだろうか?
自分の馬鹿を、またも後から気付く事になる。
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