お願い

5/5
前へ
/96ページ
次へ
『必要以上のボディタッチをしようものなら……。』 産休に入る前の水菜の言葉を思い出す。 (こわ!バレたら何を言われるか…いや、家を出て行く。 絶対にバレるわけにはいかない!でも、必要以上の……あれは事故だ。 緊急時だ。故意じゃない。バレてもいいんじゃないだろうか?) 考えながら帰宅する。 「おかえりなさい。」 笑顔で水菜が迎えてくれる。 お弁当箱を渡すタイミングで言うべきかどうかを悩む。 渡して言おうとした時、ベビーベッドの中で空が泣き出した。 お弁当箱を渡してベビーベッドに直行する。 「そ〜ら!どうした?お父さんだよ?ただいま。」 顔を出すと、少し笑う。 「笑った!水菜!笑ったよ!」 「良かったわね?あ、手を洗って来て?空、触る前に…。」 「ああ、そうか。ごめん。すぐ洗ってくる。」 洗面所に走る。 「ねぇ?真……。お弁当、どうだった?食べれた?」 キッチンから水菜が少し大きな声で聞いてきた。 珍しいなと思いながら返事をした。 「んー?美味しかったよ?」 洗面所で返事をして、廊下を歩いてリビングに入る。 カウンターの前で少し止まり、水菜を見て返事をした。 「いつも通り、美味しかった。どうかした?」 「……ううん。なら、良かった。」 水菜の笑顔に笑顔で返して、愚図り出した空の所に向かった。 幸人みたいにコミュニケーション能力が高ければ、この時、水菜の様子に気が付いたのだろうか? 自分の馬鹿を、またも後から気付く事になる。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4110人が本棚に入れています
本棚に追加