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「失礼します。お疲れ様でした。コーヒーをお持ちしました。」
「んー。お疲れ様。」
会議が終わり先に部屋に戻った真に、水菜はコーヒーを届けた。
モニターを見てキーボードを叩く。
顔は向けない。
数分待ち、水菜は話し掛ける。
「最初から広告は二つ作るおつもりで?」
「んー1本でいいのが出来れば、1本のつもりだったよ?」
「あれも、良い広告だと思いましたが…。」
「悪くはない、けどインパクトがない。エタエモがあれでは、IT企業の名前が泣く。」
「悪くはないって…真には褒め言葉よね?それ以上を求めるのね?」
ため息を吐いて水菜は言う。
「自分の会社の広告は一番だと思っている。まだ出来んだよ!やれば…。」
「そう言えばいいのに…。これもいい!もっと良いのを作ってくれって。」
「言えるか!」
「ふ〜ん。だからいつも不機嫌な社長と言われるのよ?」
「言わせとけ!」
少し照れた顔で真は答えた。
「良かったですね?林田君、秘書に残る事になって。」
「あいつは副社長の飼い犬だ。懐いている。俺の事は嫌いみたいだな?」
コーヒーを飲み、真が言う。
「副社長を助ける良い秘書になります。良かったです。」
「良かった?」
「はい。梨香もこれからもっと鍛えるつもりだと…。最近の子は少し注意すると辞めがちなので不安だった様ですけど、社長に意見が言えるなら大丈夫だろうと…。」
「どういう意味だ?」
「そういう意味です…。」
笑顔で笑う水菜を真は見つめていた。
そして年末、新年の挨拶と同時に梨香から重大発表をされる。
「じゃーん、水菜より2ヶ月遅いですが、同級生でーす!」
「は?子供?腹にか?」
「真!言い方!おめでとうでしょ?まだ、会社には内緒ね?」
「社長に発表して内緒も何もないだろ?あ、水菜知ってたな?」
「うん。だから林田君残って良かったって…。」
「今までは遠慮してたけど、これからはバリバリ行くから!」
梨香が言うと、幸人は困った顔をして、
「妊婦だし、林田君可哀想だから、お手柔らかに…。」
と、言う。
「いいけどさ、水菜と完全に産休被るだろ?大丈夫か?室長の席はどうすんだよ……。計画的にお願いしますよ。」
真が幸人を見て言う。
「ギリまで働くし、3ヶ月で戻るつもり。私、決めたの。」
「何を?」
梨香の言葉を男性陣が不思議顔で待っている。
水菜はこの宣言を事前に聞いていた。
「バリバリ働く!でもそれは、自立のためと幸人を見張るため。
あんなに一緒にいて浮気する時間があるなんてショックだった。
これからは見張る!覚悟しなさいよ幸人!二度はないわ!!」
「だってさ、幸人。二度目があったら、自立しているから離婚しまーすだって…。」
楽しそうに真が言った。
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